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賃貸は対象?不動産業の事業再構築補助金について解説

新型コロナウイルス感染症の影響により、売り上げが減少した事業者は増加傾向であると言えます。その事業の再構築を行うため、資金を補助する「事業再構築補助金」があります。しかし、不動産賃貸業なども対象となるのでしょうか。そこで今回は、事業再構築補助金の仕組みや事業再構築補助金の主な申請要件、補助対象経費、不動産業の事業再構築補助金について解説します。

そもそも事 業再構築補助金とは?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、事業再編や業態転換、事業転換、業種転換、新分野展開、これらの取組を通じた規模の拡大等に​​チャレンジする中⼩企業や個人事業主などを対象とした補助金です。

 

令和2年度3次補正予算では1兆1,485億円、令和3年度補正予算でも6,000億円を超える額が組み込まれています。

 

7次の公募が2022年9月30日まで受付中です。(8月31日現在)

事業再構築補助金の類型

通常枠・大規模賃金引上枠・回復・再生応援枠・グリーン成長枠・緊急対策枠の5つの事業類型があります。

 

・通常枠

​​​​事業再構築補助金の一般的な枠を指します。要件が緩やかで​​補助金額は少ないことが特徴です。

 

通常枠の補助額

従業員 補助額
20人以下  100万円~2,000万円
21~50人 100万円~4,000万円
51人~100人 100万円~6,000万円
101人以上 100万円~8,000万円

 

補助率は、中堅企業:1/2(4,000万円超は1/3)、中小企業:2/3(6,000万円超は1/2)となります。

 

・大規模賃金引上枠

多くの従業員を増やし、継続的な賃金引上げにも取り組み、生産性を向上させる中小企業等を対象とした枠を指します。

大規模賃金引上枠で不採択となった場合、通常枠で再審査します。

 

補助対象者 補助金額
従業員数101人以上の

中小企業・中堅企業

8,000万円超~1億円

 

補助率は、中堅企業:1/2(4,000万円超は1/3)、中小企業:2/3(6,000万円超は1/2)となります。

 

・回復・再生応援枠

引き続き業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者を対象とした枠を指します。

回復・再生応援枠で不採択となった場合、加点の上、通常枠で再審査します。

 

従業員数 補助金額
5人以下 100万円~500万円
6~20人 100万円~1,000万円
21人以上 100万円~1,500万円

 

補助率は、中小企業:3/4、中堅企業:2/3、となります。

 

・最低賃金枠

 最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企

業等を対象とした枠を指します。

 

最低賃金枠は、回復・再生応援枠に比べ、採択率において優遇されます

 

従業員数 補助金額
5人以下 100万円~500万円
6~20人 100万円~1,000万円
21人以上 100万円~1,500万円

 

補助率は、中小企業:3/4、中堅企業:2/3となります。

 

・グリーン成長枠

グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を対象とした枠です。

 

中小/中堅 補助金額
中小企業 100万円~1億円
中堅企業 100万円~1.5億円

補助率は、中小企業:1/2、中堅企業:1/3、となります。グリーン成長枠に限り、再度申請を行うことが可能ですが、支援を受けることができる回数は2回を上限としています。

 

・緊急対策枠

​​コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」に基づき、原油価格・物価

価格高騰等の予期せぬ経済環境の変化の影響を受けている事業者を対象とした枠を指します。

 

従業員 補助額
5人以下 100万円~1,000万円
6~20人 100万円~2,000万円
21~50人 100万円~3,000万円
51人以上 100万円~4,000万円

 

補助率は、中小企業:3/4、中堅企業:2/3です。

ただし、中小企業は、​​従業員数5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は2/3、

 

中堅企業は、従業員5人以下の場合500万円を超える部分、従業員数6~20人の場合1,000万円を超える部分、従業員数21人以上の場合1,500万円を超える部分は1/2となります。

事業再構築補助金の主な申請要件

事業再構築補助金は、申請すると全ての事業者が採択されるわけではありません。一定の申請要件を満たす必要があります。

 

事業再構築補助金の申請要件は、売上が減っている、事業再構築に取り組む、認定経営革新等支援機関と事業計画を策定するといった3つがあります。

 

1.売上高が減少した

2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高がコロナ以前(2019年または2020年1月〜3月)の同3ヶ月の合計売上高と比較し、10%以上減少していることです。

 

また、2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較し、5%以上減少していることです。

 

2.事業再構築に取り組む

事業再構築指針に沿った、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編などを行っていること。

 

これらの5つの分類ごとに​​製品等の新規性要件、市場等の新規性要件、製造方法等の新規性要件、売上高構成比要件、設備撤去等要件など、それぞれの要件が定義されています。

 

詳細は、経済産業省「事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業)」をご確認ください。

(参考:経済産業省「事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業)」)

https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/summary.pdf?0730

 

3.認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する

事業計画書を認定経営革新等支援機関(認定支援機関)と策定します。

 

認定支援機関とは、中小企業庁が2012年に創設したもので、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上あるものとして、国の認定を受けた支援機関を指します。

 

例えば、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関などです

 

補助金額が3,000万円を超える案件の場合は、金融機関(銀行や信用金庫、ファンドなど)が参加して策定します。

 

金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで策定します。

 

4.付加価値額の要件

 

補助事業終了後3〜5年で付加価値額の年率平均3.0%(グリーン成長枠は5.0%)以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定する。

 

付加価値額は、営業利益+人件費+減価償却費を合わせたものです。

 

5.三次公募より、​​最低賃金を踏まえた見直しの追加と一部変更

三次公募より、最低賃金枠の創設、通常枠の補助上限額の見直し、その他の見直し、さらに、新規性の判定において「過去に製造等した実績がない」から「コロナ前に製造等した実績がない」に変更されました。

補助対象経費

事業再構築補助金の対象となる経費は、以下の通りです。

  • 建物費
  • 機械装置・システム構築費
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 広告宣伝・販売促進費 
  • 研修費
  • 海外旅費

事業再構築補助金は不動産業でも申請可能か?

 

不動産業者でも事業再構築補助金の申請は可能です。しかし、単純な不動産賃貸業は採択されにくい、または対象外となるケースがあります。

 

また、不動産の購入は補助対象経費の対象外とされ、事業再構築補助金を利用することができません。

 

不動産賃貸業が不採択になる可能性が高い理由

・公募要領に記載の不採択又は交付取消事由に該当する

以下の該当する事業計画である場合は、不採択又は交付取消となる旨が記載されているため、不動産賃貸業が不採択になる可能性が高いです。

3.専ら資産運用的性格の強い事業

4.建築又は購入した施設・設備を自ら占有し、事業の用に供することなく、特定の第三者に長期間賃貸させるような事業

(中小企業等とリース会社が共同申請を行い、リース会社が機械装置又はシステムを購入する場合は、これに当たりません。)

(参考:令和四年度予備費「事業再構築補助金」公募要領(第7回)」)

 

・製品等の新規性要件を満たしにくい

過去にその製品を製造・提供した実績がないこと、製造・提供に用いる主要な設備を変更すること、定量的に性能又は効能が異なること(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)

 

このように不動産賃貸業は、製品等の新規性要件を満たすことが難しいため、不採択になりやすいと考えられます。

 

とはいえ、​​不動産賃貸業のすべてが不採択になるわけではありません。

事業再構築補助金の対象となるケース

・コワーキングスペース

コロナ禍でテレワーク・リモートワークなど、店舗ビジネスから新しい働き方に業務転換する​​新たなビジネスモデルとして需要が高まっています。

 

主な採択事例は、IOTを活用しコロナウィルス対策を行う日本初のレンタルスペース、動画制作の内製化事業および社内遊休スペースを活用して撮影スタジオを併設したコワーキングスペース事業など。

 

・レンタルオフィス事業

テレワーク・リモートワークの普及でレンタルオフィスの需要も高まっています。例えば、マンションの一部にオフィス機器を導入し、レンタルオフィスとして新分野を展開するケースです。

 

主な採択事例は、公園等屋外スペースにモバイルレンタルオフィスを装備し、企業のリモートオフィスニーズにマッチングさせる事業、日本在留の外国人向けのレンタルオフィス事業など。

 

・一棟貸し宿泊事業

古民家再構築事業のノウハウを生かした、ワーケーションとしての利用を可能とする​​一棟貸しの宿泊事業やシェアハウスのノウハウを活かした温泉付き一棟貸し民泊事業なども、採択されています。

 

・グランピング事業

コロナ禍でアウトドア人気の高まりから、​​グランピング事業も事業再構築補助金の対象となっています。グランピングは、コテージ、シャワールーム、トイレなどが完備されています。

まとめ

今回は、​​​​事業再構築補助金の仕組みや不動産業の事業再構築補助金について解説しました。不動産賃貸業では、公募要領に記載の不採択又は交付取消事由に該当する場合や製品等の新規性要件を満たしにくいといった理由により、不採択になる可能性が高い分野です。

 

しかし、すべての不動産賃貸業で不採択になるわけではなく、コワーキングスペースやレンタルオフィス事業、一棟貸し宿泊事業、グランピング事業などで採択されている事例が多数あります。

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