京都・宿泊事業の現状と新ルールについて解説
京都にはホテルや旅館、民泊などの施設が多数あります。しかし、コロナ禍で宿泊事業が大きく変化しています。京都では無許可営業の問題もあったため、全国で初めて「民泊」対策プロジェクトチームを発足するなどの対策を行っています。
今回は、コロナ禍の京都・宿泊事業についてや京都の民泊独自ルール、京都市宿泊施設の建築等に係る地域との調和のための手続要綱の仕組みなどについて解説します。
コロナ禍の京都・宿泊事業について
2014年には、アメリカの旅行雑誌「トラベルアンドレジャー」のワールドベストシティランキングで京都が世界一に選ばれています。
2014年ワールドベストシティ 上位10都市
1位 | 京都(日本) | 90.21点 |
2位 | チャールストン(アメリカ) | 90.18点 |
3位 | フィレンツェ(イタリア) | 89.99点 |
4位 | シェムリアップ(カンボジア) | 89.82点 |
5位 | ローマ(イタリア) | 89.61点 |
6位 | イスタンブール(トルコ) | 89.58点 |
7位 | セビリア(スペイン) | 89.28点 |
8位 | バルセロナ(スペイン) | 89.18点 |
9位 | メキシコシティ(メキシコ) | 89.07点 |
10位 | ニューオーリンズ(アメリカ) | 88.74点 |
(参考:トラベルアンドレジャー公式サイト)
https://www.travelandleisure.com
また、観光庁「宿泊旅行統計調査」によると、京都府における外国人の延べ宿泊者数は約457.8万泊となっており、前年よりも39.1%増加しています。
(参考:観光庁「宿泊旅行統計調査」)
https://www.mlit.go.jp/common/001136323.pdf
日本旅行業協会「施設所在地、宿泊施設タイプ別延べ宿泊者数」によると、2016年の京都府における日本人延べ宿泊者数は1199.1万泊という
(参考:一般社団法人 日本旅行業協会公式サイト)
しかし、2021年には新型コロナウイルス感染拡大により、3年前に比べ、宿泊者がおよそ半分にとどまる状況になっています。
観光庁によると、2021年1年間に国内のホテルや旅館などを利用した宿泊者は、速報値で延べ3億1497万人と、感染拡大前の3年前と比べて47.1%減少です。
コロナ前のインバウンド需要が大幅に減少していることが考えられます。
(参考:NHK「2021年の国内宿泊者数 感染拡大前の半分に
減少率最高は沖縄県」)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/economic-indicators/detail/detail_77.html
一方、観光庁「宿泊旅行統計調査」第2次速報値によると、2022年12月の全国の宿泊施設における延べ宿泊者数は、21年同月比19.7%増の4690万人泊となっています。
(参考:観光庁「宿泊旅行統計調査(令和4年12月・第2次速報)」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000503.html
コロナ禍の無許可営業問題
コロナ禍の民泊において、京都府では民泊の無許可営業が問題になっています。
2016年から2019年5月末までに通報があった のは2,518 施設にも上っているのです。
この99% が営業停止という状況になっています。
そもそも民泊とは?
住宅の全部または一部を旅行客などに有償で宿泊するサービスを指します。
インターネットを通じて、短期間で住宅を貸したい人と旅行客をマッチングさせるビジネスです。
ただし、法律上の定義ではありません。
民泊は、個人宅やマンションの一室、別荘など、さまさまな施設があります。
しかし、個人宅を貸す場合には、旅館業法に抵触する物件が多くあり、
違法民泊が増加する問題が発生しました。
これを受け、2018年に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されました。
京都では無許可営業の問題を受け、2015年に全国で初めて「民泊」対策プロジェクトチームを発足。
2016年7月には、民泊に関する専用窓口「民泊通報・相談窓口」を設置しました。
京都の民泊独自ルール
京都では、独自の民泊ルールがあります。
・誓約書の提出
民泊新法施行後の市への届け出の際、直近3カ月に無許可営業をしていないという誓約書の提出が必要
・住居専用地域の営業
京都市においての住居専用地域では、原則、1月15日の正午~3月16日の正午に限り営業が可能
住居専用地域は、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、田園住居地域、準住居地域の8種類が都市計画法に規定されています。
・苦情対応の駆け付け要件
苦情の対応や緊急時に備えて、約10分以内に半径800mの範囲に管理者らを駐在させる「駆け付け要件」を設定しています。
京都市宿泊施設の建築等に係る地域との調和のための手続要綱
2021年(令和3年)4月1日以降に建築確認申請(建築確認申請が不要な場合は,工事着手)を行う場合は、
「京都市宿泊施設の建築等に係る地域との調和のための手続要綱」に基づく手続が必要になります。
対象となる宿泊施設
・旅館業法に基づく宿泊施設(旅館・ホテル,簡易宿所)
対象となる行為
・宿泊施設の建築(新築,増築,改築,移転)
・宿泊施設への用途の変更(建築確認申請が不要なものを含む)
住宅宿泊事業法に基づく届出住宅や既存の宿泊施設の事業者の変更など、建築行為を伴わないもの、増築部分が,変更後の延床面積の2分の1未満かつ50m²以下、宿泊施設以外の部分を用途変更して宿泊施設を増床する場合で一定規模以下のもなどは、
対象外となっています。
対象区域
市内の市街化区域全域が対象です。
市街化区域とは、都市計画区域について、すでに市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域と定められています。
「宿泊施設対策重点区域」と「地域まちづくり協議区域」で手続きが異なるため、
注意が必要です。
宿泊施設対策重点区域
概ね北大路通、東大路通、西大路通、 十条通の各沿道から 外側25mのライン
地域まちづくり協議区域
地域まちづくり方針(建 築協定など)がある地 域で,地域まちづくり組 織からの意向により指定 (2021年(令和3年)3月頃から指定予定)
宿泊施設の建築などを行う場合は、市と事前協議が必要です。
宿泊施設を計画するにあたり、周辺の配慮事項や地域への貢献事項を提示する必要もあります。
配慮事項とは、周辺への騒音問題、宿泊客のマナーなどがあげられます。
貢献事項とは、町内会への加入、災害時の避難場所としての提供などがあげられます。
事業者は、計画敷地の見やすい場所に構想の概要を記載した標識を設置しなければなりません。
また、宿泊施設の概要については地域住民への説明が必要です。
(参考:京都市都市計画局建築指導部建築指導課「宿泊施設の新たなルールがスタートします」)
https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/cmsfiles/contents/0000177/177773/tirashiR3-2.pdf
まとめ
今回は、コロナ禍の京都・宿泊事業についてや京都の民泊独自ルール、京都市宿泊施設の建築等に係る地域との調和のための手続き要綱の仕組みなどについて解説しました。
2014年にアメリカの旅行雑誌「トラベルアンドレジャー」のワールドベストシティランキングで1位に選ばれた京都ですが、2021年に新型コロナウイルス感染拡大により、3年前に比べ、宿泊者がおよそ半分にとどまる状況になりました。
2022年12月には、コロナ感染者の減少や行動制限の緩和などが影響し、回復傾向になります。
一方で、京都府では民泊の無許可営業が問題となり、2015年に全国で初めて「民泊」対策プロジェクトチームを発足し、
2016年7月には、民泊に関する専用窓口「民泊通報・相談窓口」を設置するなどの対策を講じてきました。
また、2021年(令和3年)4月1日以降は、宿泊施設の新たなルールとして建築確認申請を行う場合は、「京都市宿泊施設の建築等に係る地域との調和のための手続要綱」に基づく手続きが必要になっています。
「宿泊施設対策重点区域」と「地域まちづくり協議区域」で手続きが異なるため、
注意が必要です。