事業再構築補助金グリーン成長枠の申請要件と注意点を解説
事業再構築補助金の中でも、最大補助金額が最も大きいグリーン成長枠の概要と申請要件を解説します。
意外にもハードルは高いので、申請前に必ず確認してください。
2022年に入り事業再構築補助金の第6回公募がアナウンスされました。
中でも最大の変更点の1つとして注目されているのが「グリーン成長枠」です。
脱酸素やSDGsに関係する、14分野のグリーン成長戦略に取り組む事業者に対する、新たな補助金です。
最大補助金が大きいという特徴がありますが、一方で申請要件のハードルは低くありません。
概要や申請要件を詳しくお伝えするので見ていきましょう。
そもそも事業再構築補助金とは?
グリーン成長枠を知る前に「そもそも事業再構築補助金とは何か?」という疑問もあるのではないでしょうか。
事業再構築補助金とは、新型コロナウィルス感染症の影響により需要が減少し、これまでのビジネスでは立ち行かなくなってしまった中小企業・中堅企業を対象とした補助金です。
目的は新分野の展開や、事業内容の転換のための費用を補填することです
なお2022年3月28日より、事業再構築補助金の第6回目の公募が発表されました。その際に、今回のテーマとなる「グリーン成長枠」が新設されています。
事業再構築補助金の申請要件
まず、事業再構築補助金に設けられている下記の3つの申請要件を見てみましょう。
- 売り上げが減少している
- 事業再構築に取り組む
- 事業計画を認定経営革新等支援機関と策定する
このうち「売り上げが減少している」については、グリーン成長枠は該当しません。本来の要件との比較のためにも確認してみてください。
ここから各内容の詳細をお伝えしていきます。
①:売り上げが減少している
事業再構築補助金では、新型コロナウィルスによる売り上げ減少が条件です。
2020年4月以降の、連続する6ヶ月間のうち任意の3ヶ月の合計売上高がコロナ以前(2019年 or 2020年1~3月)の同3ヶ月の合計売上高と比較し「10%以上減少していること」が求められます。
ただし、グリーン成長枠は本条件に該当しません。
グリーン成長枠は、売上高減少要件が課されないのが特徴です。ただし、売上高の減少を示す書類を提出した場合、グリーン成長枠で不採択だった場合「通常枠」で再審査されます。
②:事業再構築に取り組む
経済産業省が公表している事業再構築指針に沿った、新分野の展開・事業転換・業態転換などを行うことが条件です。
③:事業計画を認定経営革新等支援機関と策定する
事業再構築補助金の申請では事業計画の策定が必須です。その際自分ひとりで行うのではなく、必ず認定支援機関と一緒に策定するのが条件です。
認定支援機関とは、経済産業省により認定された支援団体・金融機関・税理士・中小企業診断士などが該当します。
申請期間
事業再構築補助金第6回の公募期間は「令和4年3月28日(月)~令和4年6月30日(木)18:00まで」です。
なお、申請受付開始日については「令和4年5月下旬~6月上旬」となっています。記事執筆時点では、詳細な日時まではアナウンスされていません。
詳しくは中小企業庁の「事業再構築補助金」のページを参考にしてください。
新たに設けられるグリーン成長枠を解説
グリーン成長枠とは第6回の事業再構築補助金より設けられた新たな枠です。
温室効果ガスの削減に取り組み、技術開発や人材育成を行う事業者に対し、補助上限金額を最大1.5億円まで引き上げた特別枠です。
グリーン成長枠の補助上限額、および補助率を見てみましょう。
- 中小企業:補助金額100万円~1億円(補助率1/2)
- 中堅企業:補助金額100万円~1.5億円(補助率1/3)
この補助金額最大1.5億円というのは、他の申し込みプランと比較しても圧倒的に大きいのが特徴です。例えば事業再構築補助金の最低賃金枠では最大1,500万円までです。
なお、グリーン成長枠では2050年に向けて成長が期待される「グリーン成長戦略実行計画」の課題となる、下記14分野の解決に取り組む中小企業や中堅企業を対象としています。
- 洋上風力・太陽光・地熱
- 水素・燃料アンモニア
- 次世代熱エネルギー
- 原子力
- 自動車・蓄電池
- 半導体・情報通信
- 船舶
- 物流・人流・土木インフラ
- 食料・農林水産業
- 航空機
- カーボンリサイクル・マテリアル
- 住宅・建築物・次世代電力マネジメント
- 資源循環関連
- ライフスタイル関連
後ほどグリーン成長枠の想定事例を一部紹介するので参考にしてください。なお、グリーン成長枠は、事業再構築補助金でありながら売り上げ減少要件は課されません。
そもそも事業再構築補助金は、コロナ対策の補助金が目的でしたが、グリーン成長枠はコロナの影響を受けていなくても利用できるため、他の通常枠などと比べて異質な扱いです。
またグリーン成長枠のみ「採択後の再申請が可能」という特徴もあります。
ただでさえ、事業再構築補助金は大きな補助となるものです。それが2度給付されるメリットは大きいです。
グリーン成長枠の対象要件を解説!
最大補助金額1.5億円が魅力的なグリーン成長枠ですが、申請要件は優しくありません。
「令和二年度第三次補正・令和三年度補正事業再構築補助金公募要領(第6回)」に記載のある、下記の要件を見てみましょう。
- 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること【事業再構築要件】
- 事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること。補助金額が3,000万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)と策定していること【認定支援機関要件】
- 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること【付加価値額要件】
- グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組であって、その取組に関連する2年以上の研究開発・技術開発又は従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせて行うこと【グリーン成長要件】
また、下記は過去に採択および交付決定を受けている場合の要件です。
(※採択された事業を辞退した場合を除く。第6回公募においてグリーン成長枠を含む2つの事業類型に申請することはできません)
- 既に事業再構築補助金で取り組んでいる又は取り組む予定の補助事業とは異なる事業内容であること【別事業要件】
- 既存の事業再構築を行いながら新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金力があること【能力評価要件】
グリーン成長戦略実行計画の課題に取り組む事業である他、グリーン成長枠には複数の要件が設けられています。
中でも、事業終了後3年~5年で付加価値額の年率平均5.0%の増加が求められている点については、難易度が高いといえます。
(※付加価値額とは営業利益・人件費・減価償却費を足したもの)
事業再構築補助金の通常枠では3%以上の増加が要件のため、グリーン成長枠の場合相当儲かる事業でなければ厳しいです
また、事業再構築補助金はすでに採択や交付決定を受けている事業者でも申請可能ですが、これまでと異なる別事業であることの説明が求められます。
同様に既存の事業再構築を行いながら、新たに取り組む事業再構築に関する体制や資金力の説明も必要です。
グリーン成長枠の想定事例を一部紹介
グリーン成長枠の対象となる課題の取り組みとして、経済産業省が公開している想定事例の一部を紹介します。
住宅・建築物に関する想定事例
住宅・建築物は、国民の生活・生計におけるエネルギー消費量削減に係る分野です。
生活の改善、および都市のカーボンニュートラル化を進めるための、市場環境を国内に普及させる目的があります。
想定事例として次の「現状と課題」および「申請事例」を見てみましょう。
(現状と課題)
- 省エネ住宅の普及に向け、供給側の中小工務店においてZEH等に対する習熟度の向上が課題。
(想定する申請事例)
- 中古住宅の不動産仲介事業に参入し、省エネ、高耐震のノウハウを生かした建築技術によりフルリノベーションを行い、新築同等の高性能住宅をリーズナブルな価格で提供。
自動車に関する想定事例
自動車の分野では、自動車産業における電動化を推進し、2050年の自動車のライフサイクル全体でのカーボンニュートラル化を目指します。
(現状と課題)
- 蓄電池・燃料電池・モーター等の電動車関連技術・サプライチェーン・バリューチェーンの強化は課題となる。特に、軽自動車・商用車等ユーザーのコスト意識や車体設計上の制約が厳しい自動車の電動化や、中小企業等のサプライヤーの競争力強化は、重要な課題である。
(想定する申請事例)
- 脱炭素社会の推進に伴う電動化を踏まえ、製造業では、電動車向け部品の開発・試作に踏み切ること、整備・販売業では、EVや燃料電池車への整備へ事業展開することで、事業再構築を図る。
- 新事業を成功させるためには、電動車において求められる部品や性能について、正確に理解することが不可欠であることから、外部の専門家を招聘して研修を通じて、人材育成を行う。
まとめ
補助上限額が最大1.5億円となっており、他の申し込みプランと比較し各段と大きいグリーン成長枠は、可能なら利用したいところです。
ただし、今回お伝えしてきたように申請要件のハードルが高いのも事実です。
「グリーン成長戦略実行計画14分野の中に、自社が取り組んでいる事業があるから対象になるのでは?」と思っても「課題の解決につながらなければ対象外」です。
経済産業省の課題の事例を確認し「解決を資する取り組みである」と判断した場合に、申し込みを検討しましょう。