家賃は対象?不動産業で事業再構築補助金を活用する方法について解説
新型コロナウイルスの感染拡大や物価高騰の影響により、事業の展開・再構築を求められる中小企業者・個人事業主が多くなっています。そのような状況の中、事業再構築補助金を活用することで最大8,000万円の資金を得られる可能性もあるのです。しかし、どの業種でも採択されるわけではありません。そこで今回は、不動産業で事業再構築補助金の利用できるかどうか、利用できた場合の採択事例などをご紹介します。
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編など、事業再構築など、事業再構築を希望される中小企業・個人事業者を支援するための補助金制度です。
経済産業省の事業再構築指針に定められています。
(参考:経済産業省「事業再構築指針の手引き」)
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdf
背景には、新型コロナウイルスの感染拡大による影響や物価高騰などの経済事情もあり、思い切った事業の転換・再構築を迫られる状況があります。
このような状況に対応するため、経済産業省は予算1兆1,485億円を確保し、事業の一部を補助することになりました。
通常枠の補助金額は、100〜6,000万円、補助率は3分の2です。
対象者は、日本国内に本社を有する中小企業者等及び中堅企業、企業組合、個人事業主などです。
事業再構築補助金の要件(通常枠)
・新型コロナウイルスの影響により、売上が減少したこと
(申請前の直近6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高がコロナ前の同3ヶ月と比較し、10%以上減少している)
・事業再構築を行うこと
(新分野展開、業態転換、事業転換・業種転換)
新分野展開
例えば、宿泊施設を経営していたが、コロナ禍の収入減により、新たにキャンプ用品の販売を行うケースです。
業態転換
例えば、定食屋を経営していたが、コロナ禍の収入減により、テイクアウト専門のお店に転換したケースです。
事業転換
例えば、スポーツ用品店を経営していたが、コロナ禍の収入減により、美容関連の販売に事業を転換したケースです。
業種転換
例えば、宿泊施設を経営していたが、コロナ禍の収入減により、コワーキングスペースを運営するケースです。
・事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関と策定する
認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関です。
例えば、税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関等を指します。
・中小企業者または中堅企業に該当する
資本金が3億円以下、常勤の従業員数が300人以下であることが該当します。
・補助事業終了後 3~5 年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均 3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること
令和4年の予備費から原油価格・物価高騰等緊急対策枠が新設されています。
事業再構築補助金は不動産業も対象なのか?
事業再構築補助金で不動産を購入することやアパート経営などの賃貸業を行うことは対象外となっています。
事業再構築補助金の公募要領には、不採択または交付取消になる事例として、以下のことが記載されています。
「建築又は購入した施設・設備を自ら占有し、事業の用に供することなく、特定の第三者に長期間賃貸させるような事業」
(参考:事業再構築補助金「公募要領」)
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo003.pdf
専ら資産運用的性格の強い事業も公募要領で不採択又は交付取消となる事業計画に該当します。
また、事務務所等にかかる家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費なども補助対象外と記載されています。
不動産業が事業再構築補助金の採択を受けるケース
・新分野展開
不動産賃貸業から新しい分野へ展開する
・事業転換
不動産業から別の他の事業へ転換を図る
・業種転換
不動産業から健康食品販売などの別の業種へ転換すること
・業態転換
不動産業が賃貸からコワーキングスペースやレンタルオフィス経営などに業種転換すること
不動産会社が事業再構築補助金の採択された事例として、生活保護者向け支援のWebサービスがあります。
家賃5万円以下の物件を専門に取り扱う不動産会社で、ITを活用した生活保護支援サイトを運営しています。
生活保護支援サイトでは、生活保護の無料診断、申請同行のサポート、賃貸物件審査の無料診断、ご負担0円物件サービスなども行っています。
(参考:株式会社FORYOU「ほゴリラ」)
不動産業で事業再構築補助金の採択が難しいケース
・駐車場経営
駐車場経営は、遊休地や相続で得た土地などを活用し、駐車料金を得る仕組みです。
個人経営や管理委託方式、一括借り上げ方式などがありますが、資産運用的な性格と判断される可能性が高くなります。
そのため、審査員から採択される確率は低いでしょう。
・アパート・戸建ての不動産賃貸業
前述した通り、不動産賃貸業は審査員から採択される確率は低いです。1ヶ月以上の賃貸経営は、資産運用的性格と判断される可能性が高くなるためです。
しかし、独自性のあるレンタルオフィス事業やコワーキングカフェなどの事業転換では、採択事例があります。
独自性ある事業での採択事例として、料亭を撤退し、新型コロナウイルス感染拡大のテレワーク需要に応え、感染対策を強化したビジネスマン向けテレワーク用コワーキングカフェ事業への事業転換です。
また、ワーケーションを希望するユーザーをターゲットとして、ワーケーション型非接触コワーキングスペース事業などの事例もあります。
(参考:事業再構築補助金・ものづくり補助金の申請代行サポート(CPA)「コワーキング関係の採択事例一覧」)
https://mono-support.com/saikouchiku/coworkingsaikouchiku/
事業再構築補助金の対象となりうる不動産関連の経費
事業再構築補助金の対象となる経費に「建物費」があります。
その建物費とは、以下のとおりです。
- 専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設、改修に要する経費
- 補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費
- 補助事業実施のために必要となる賃貸物件等の原状回復に要する経費
- 貸工場・貸店舗等に一時的に移転する際に要する経費(貸工場・貸店舗等の賃借料、貸工場・貸店舗等への移転費等)
ただし、土地の購入、既存の建物、賃貸費用などは「建物費」に該当しません。
その他の事業再構築補助金の経費は以下のとおりです。
・機械装置・システム構築費
・技術導入費
・専門家経費
・運搬費
・クラウドサービス利用費
・外注費
・知的財産権等関連経費
・広告宣伝・販売促進費
・研修費
・海外経費(卒業枠、グローバルV字回復枠のみ)
まとめ
事業再構築補助金で不動産を購入することやアパート経営などの賃貸業を行うことは対象外となっています。1ヶ月以上の賃貸経営は、資産運用的性格と判断される可能性が高くなるためです。しかし、不動産業から独自性のある事業転換や業態転換を行うと採択されるケースもあります。
したがって、不動産業者で事業再構築補助金の利用を検討している場合は、採択事例を参考にしながら時代のニーズに合った事業転換などが求められるでしょう。