不動産を生前贈与するポイントを解説!メリット・デメリットを理解しておくことが重要!
家族・親族が所有する不動産(土地・建物)を次世代へ託す方法には、相続・生前贈与があります。
生前贈与にはメリットもあればデメリットもあるため、現在検討している方やこれから予定している方は、事前に正しい知識を身に付けておくことが重要です。
当記事では、生前贈与の概要・メリット・デメリット・必要コスト・手続の流れについてご紹介しています。確実且つスムーズに生前贈与を行いたい方は、ぜひご参考下さい。
不動産の生前贈与とは?
生前贈与とは、贈与者が生存しているうちに特定の相手に財産を無償で贈与する法的行為のことです。
今回取り上げている不動産以外にも、現金・預貯金・株式などさまざまな財産を贈与することができます。
生前贈与はよく相続と比較されますが、両者では以下のような違いがあります。
生前贈与 | 相続 | |
実施される次期 | 贈与者の存命中 | 被相続人の死後 |
対象者 | 贈与者・受贈者 | 被相続人の相続人・受遺者 |
発生する税金 | 贈与税 | 相続税 |
課税対象 | 受贈者 | 相続人・受遺者 |
どちらの方法を選択した場合においても、税金の支払いは発生します。
不動産の生前贈与のメリット
不動産の生前贈与にはメリット・デメリットの両面があります。そのため、生前贈与を検討している方は事前に把握しておくことが重要。
ここでは、不動産の生前贈与のメリットについてお伝えします。
相続したい相手と相続時期を指定できる
不動産の生前贈与では、贈与したい相手と時期を自由に指定することができます。相続では法定相続人ならびに取り分が決められているため、特定の相手に財産を多く譲渡することはできず、また譲渡する時期も選ぶことができません。
任意のタイミングで意図した相手に確実に不動産を譲渡できることは、生前贈与を行う大きなメリットと言えるでしょう。
不要な相続争いを事前に回避したい場合や、財産の分配を任意で行いたい場合には非常に適しています。
相続税の節税が期待できる
生前贈与を行うと、相続財産を不動産の評価額分だけ減額することができるため、相続税の節税効果が期待できるのがメリットです。
ただし、金銭面の損得だけにフォーカスすると、生前贈与の内容・方法次第では相続を選択した方が良いケースも多いため、事前に贈与税・相続税の試算を行い比較検討することが重要となります。
不動産の生前贈与のデメリット
続いて、不動産の生前贈与を行うデメリットについてお伝えします。
手続が煩雑
不動産の生前贈与は複数の手続きを行う必要があり、作成すべき書類も多いため、非常に煩雑です。書類にミスや抜け漏れがある場合においては修正・再提出を行わなければ手続を完了することはできません。
登記や契約書作成など専門家でなければ難しい作業や、自身で集めた情報だけでは適切な判断が難しい部分もあるため、手軽に実行できないことが大きなデメリットです。
コストがかかる
不動産の生前贈与を行う際には、以下のようなさまざまな費用が発生するため、相続された不動産をそのまま受け取れるわけではないことがデメリットです。
・不動産取得税
・登録免許税
・贈与税
・専門家への依頼費用
これらのコストを合計すると、相続を行うよりも高くなるケースの方が多いのが実状です。普通に相続を行った方が金銭的には得であるため、相続と生前贈与のどちらを選択するかは慎重に精査する必要があります。
不動産の生前贈与にかかる各種コストを解説
不動産の生前贈与にはさまざまなコストが発生するため、贈与財産をそのまま受け取ることはできません。そのため、どのようなコストが発生するのか把握して事前に見積もっておくことが重要。
ここでは、不動産の生前贈与にかかる各種コストについて解説します。
不動産取得税
不動産取得税とは、売買・交換・贈与・新築・増改築で不動産を取得した者に対して、不動産が所在する都道府県により一度のみ課税される税金です。税率は土地・建物どちらも3%で設定されており、住宅用以外の建物に対しては4%となります。
不動産取得税は、以下の計算式により算出されます。
取得した不動産の価格×税率=課税額
課税対象となる不動産の価格には、原則として固定資産評価額が用いられます。例えば評価額3,000万円の住宅と土地を取得した場合は、以下のような課税額となります。
3,000万円×3%=90万円
登録免許税
登録免許税とは、不動産の名義変更が行われた際に発生する国税です。生前贈与を行う場合は固定資産評価額の2%、相続の場合は0.4%を支払う必要があります。
例えば、固定資産評価額4,000万円の不動産を生前贈与した場合は、80万円の登録免許税を納めることとなります。
登録免許税は固定資産評価額の多寡により決定されるため、生前贈与を行う際には前もって確認を行い、納税額を見積もっておきましょう。
贈与税
不動産の生前贈与を行った場合には、贈与税と呼ばれる贈与された財産にかかる税金を支払う必要があります。
贈与税には年間110万円までの基礎控除が可能となっており、控除額を超えた贈与する不動産の合計金額に対して10~55%の累進課税にて課税が行われます。
また、贈与税は暦年課税制度が採用されているため、年間贈与額が110万円以下の場合には贈与税が課税されない仕組みとなっています。
専門家への依頼費用
不動産の生前贈与は自身で行うことも可能ですが、煩雑な手続きが必要となるため、手間を省きたい場合や確実に進めたい場合は専門家を頼ることとなります。
一連の手続きを司法書士等に依頼した場合は、80,000~180,000円程度の費用が発生します。
専門家への依頼を検討している方は、生前贈与にかかる各種コストとは別途、専門家への依頼費用も用意しておきましょう。
不動産を生前贈与する際の節税方法
不動産の生前贈与には上述の通り各種税金がかかるため、少しでも負担を減らすためには適用可能な節税方法を利用することが重要です。
ここでは、不動産を生前贈与する際の節税に活用できる制度について解説します。
相続時精算課税
相続時精算課税とは、財産贈与を行う際に合計2,500万円まで贈与税を控除できる制度です。2,500万円までなら無税で贈与が可能であり、贈与額が2,500万円を超えた部分に対しても、一律20%の税率でしか課税されません。
一般的な贈与の形態である暦年贈与は累進課税であるため、2,500万円以上の金額に対しては、45~55%もの税率がかかることを考えると非常にお得な制度と言えます。
但し、一度相続時精算課税を選択すると暦年贈与に戻せないことや、相続時に小規模宅地等の特例が使えないことなどデメリットもあるため、同制度を利用する前には慎重な検討を行う必要があります。
贈与税の配偶者控除
贈与税の配偶者控除とは、夫婦間での不動産や不動産を取得するための金銭を贈与した場合に、2,000万円まで贈与税を控除できる制度です。
暦年贈与の基礎控除との併用が可能となっているため、実質的に2,110万円までは非課税で不動産を贈与することができます。
ただし、贈与税の配偶者控除を適用するには、贈与された翌年には居住が必要であることや結婚20年以上の夫婦が1回のみ利用できることなど、一定の要件を満たしている必要があります。
不動産の生前贈与の流れ
不動産の生前贈与を行うには、さまざまな手続を踏襲する必要があります。スムーズに贈与を進めるためには、事前に手続きの流れを把握しておくことがポイント。
以下に、不動産の生前贈与を進める流れについて解説します。
1.不動産の生前贈与の目的・相手・対象不動産・課税方法を決定する
不動産の生前贈与を行う際には、齟齬や間違いを防ぎスムーズに贈与を進めるため、贈与の目的・相手・対象となる不動産を明確に決定します。相続ではなく贈与を選択する理由についても明確化しておくことがポイントです。
生前贈与の内容によっては節税制度を活用できる場合があるため、課税方法についても検討を行っておきます。
2.不動産贈与契約書の作成・契約締結
不動産の生前贈与には、贈与者・受贈者双方の合意が必要となり、どちらか一方の合意では成立させることができません。口約束でも生前贈与を進めることはできますが、不要なトラブルや齟齬を防ぐため、不動産贈与契約書を作成しておくことがおすすめです。
契約書に双方が合意することで、合意の事実を証明することができます。
3.不動産の贈与を実施
課税方法の決定・贈与契約書の作成までが完了したら、いよいよ不動産を贈与者から受贈者へ移す手続きを行います。法務局にて贈与者・受贈者の両者が所有権移転登記を行い、不動産の名義を受贈者へと変更します。
4.不動産取得税を納付する
不動産の生前贈与を行った場合は、いかなる場合においても不動産取得税が課税されます。登記・名義変更の完了後3~6ヶ月程度が経過すると、贈与を受けた側に納税通知書・納付書が郵送されてきますので、期限までに金融機関等で納付を行っておきます。
5.贈与税を申告する
不動産を贈与された側は、贈与税の芯来奥義務が発生します。不動産贈与を受けた翌年の3月15日が申告期限となるため、管轄の税務署に申告書の提出を行います。
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まとめ
不動産の生前贈与についてご紹介してきました。不動産の生前贈与は、特定の相手に確実に財産を譲りたい場合や、相続税対策を行いたい場合において、有効的かつ効果的な方法です。
しかし、金銭的な負担は相続を行った方が少ないケースが多いため、財産譲渡の目的・意図や節税メリット等を考慮して、慎重に判断を行う必要があります。
不動産の生前贈与を検討している方は、ぜひ当記事も参考にして、事前に情報を集めて最適な判断を行って下さい。