回復傾向?宿泊事業の売上と付加価値について解説
近年、コロナ禍により宿泊事業の低迷が深刻化しています。中には休業中の旅館などもあり、先行きが見えない状況でした。しかし、宿泊事業は、2022年度から徐々に回復傾向にあるのです。コロナ前のインバウンド需要のように維持するには、どのような戦略が必要となるのでしょうか。
今回は、宿泊事業の売上や割引プラン、付加価値の提供、顧客獲得方法などについて解説します。
そもそも宿泊事業とは?
宿泊施設には、旅館・ホテル・簡易宿所・下宿の4つの種類があります。
宿泊事業を行うには、旅館業法に基づき、各都道府県の保健所からの許認可が必要です。
そもそも宿泊とは、寝具を使用して、ホテル、旅館などの施設を利用することを指します。
・旅館業
旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と旅館業法に規定されています。
また、旅館営業とは、和式の構造および設備を主とする施設を設け、宿泊料を徴収し、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業および下宿営業以外のものです。
和室を中心に温泉旅館や観光旅館などがあります。
玄関帳場が必要となります。
旅館営業は、5室以上の部屋数が必要です。
1部屋の広さは、洋風建物は9㎡、和風建物は7㎡以上でなければなりません。
宿泊料を徴収しない場合は旅館業法の適用は受けません。
・ホテル営業
ホテル営業とは、洋式の構造および設備を主とする施設を設け、宿泊料を徴収し、人を宿泊させる営業を指します。玄関帳場が必要です。
洋室を中心にシティホテルやリゾートホテル、ビジネスホテルなどがあります。
ホテル営業は、10室以上の部屋数が必要です。
1部屋の広さは、洋風建物は9㎡、和風建物は7㎡以上でなければなりません。
2018年6月15日からは、ホテル営業および旅館営業は「旅館・ホテル営業」に一本化されています。
・簡易宿所営業
簡易宿所営業は、宿泊する場所を多数人で共用する構造および設備を設けて、宿泊料徴収し、人を宿泊させる営業を指します。
2段ベッドなどが備えられています。
客室の延床面積33㎡以上(宿泊者の数(2人以上)を10人未満とする場合には、3.3 ㎡に宿泊者の数を乗じて得た面積以上であること)
たとえば、ペンションやベッドハウス、山小屋、ユースホステル、カプセルホテルなどです。
玄関帳場の設置義務はありません。
・下宿営業
下宿営業は、施設を設け、1月以上の期間を単位とする宿泊料を徴収し、人を宿泊させる営業を指します。
玄関帳場の設置義務はありません。
また、学生の下宿については営業許可の対象になりません。
旅館・ホテル・簡易宿所・下宿の4つに共通していることは、入浴設備があること、洗面所および便所の手洗い設備があること、見やすい場所に施設の名称を掲げることなどです。
宿泊事業の売上について
帝国データバンクが先ごろ発表した「旅館・ホテル業界」動向調査(2022年度業績見通し)によると、直近の業況が判明した全国の旅館・ホテル業のうち、約800社を集計した結果、4割超の企業では前年同期に比べ「増収基調」であることが判明しています。
コロナ禍で低迷していた2020〜2021年度に比べ、大幅に増加傾向にあるようです。
2021年は、約6割(58.0%)が最終赤字であったため、インバウンド需要が大幅に低下していました。
一方、業績増収を予定している企業の業種は「ホテル」が46%、旅館は40%となっています。
2022年3月にまん延防止等重点措置が解除され、6月には外国人観光客の入国緩和も段階的に開始されたのをきっかけとして、徐々に回復傾向が見られます。
(参考:東京商工リサーチ『「宿泊業の売上高、コロナ前の半分に 今後は観光再開も人手不足が懸念 全国「宿泊業」業績調査』)
https://www.excite.co.jp/news/article/Tsr_analysis20220630_02/
・宿泊事業の売上の法則
宿泊事業は、一般的に客単価 × 客数 × リピート率で決まります。
リピート率というのは宿泊数ということです。どれだけ宿泊していただけるかはもちろんのこと、客単価と客数の稼働率など、バランスも大切です。
たとえば、客単価を安くしても客数が増えれば、その分、お客様の対応やベッドメイキングなどの作業が増えます。
そのため、単価を下げる重要性について、しっかり検討しなければなりません。
単に値下げをしたからといって、売上が上がるとは限らないのです。
割引プランの導入
・早割プランの導入
キャンセル不可による早割プランなどで、早い段階から予約を確保していく戦略も必要でしょう。
宿泊する日のギリギリでキャンセルされることを避けるためです。
・連泊割
朝食をサービスしたり、1泊無料、駐車料金無料など、さまざまなサービスを提供している
付加価値の提供
価格競争に巻き込まれないようにお客様に付加価値の提供することも重要なポイントになります。
・空気清浄機の設置
たとえば、プラズマクラスター空気清浄機の設置などで、ホコリや花粉、ウィルスの抑制効果が期待できます。
・露天風呂の設置
最近では、客室に露天風呂が設置されているケースもめずらしくありません。
新型コロナウイルスの影響により、個人で露天風呂を利用したいというニーズが高まっています。
・料理の工夫
料理はアイデア次第でさまざまな付加価値を提供できます。たとえば、その地域の新鮮な食材を使い、おしゃれにアレンジするなど、SNS映えするような料理の提供です。
地産地消とSNS映えという一石二鳥の効果を得られるでしょう。
ただし、料理は若者向けなのか、高齢者向なのかによっても大きく変わります。
そのため、ターゲット層に合った料理を提供することも重要です。
・大画面のテレビを設置
50インチ以上のテレビなど、大画面により、ネットフリックスやYouTubeが見れるのもサービスの一つです。
映画やアニメ、スポーツなど、さまざまなジャンルを大画面で見ることで、盛り上がることができるでしょう。
・体験コンテンツの提供
いちご狩りやぶどう狩り、山菜取りなど、体験コンテンツを宿泊費に含めて提供するのも一つの方法です。
インターネットを利用した顧客獲得方法
現在、宿泊するホテルを探す際は、スマホやパソコンなどを用いてインターネットで検索する方法がほとんどです。
そのため、自社のサイトを充実させなければなりません。
具体的には、検索結果の上位表示を目指すSEO対策の強化、価値ある情報の提供するコンテンツの強化などがあります。
自社サイトを充実させるには、ターゲットに向けて、価値のある情報・良質な記事を提供する必要があります。
まとめ
宿泊施設には、旅館・ホテル・簡易宿所・下宿の4つの種類があります。
帝国データバンクが先ごろ発表した「旅館・ホテル業界」動向調査(2022年度業績見通し)によると、全国の旅館・ホテル業のうち、約800社を集計した結果、4割超の企業では前年同期に比べ増収基調ということがわかっています。
今後の宿泊事業は、価格競争に巻き込まれないよう、お客様に付加価値の提供することも重要なポイントになります。
たとえば、早期割や連泊割に加え、空気清浄機や露天風呂、大画面のテレビ設置、料理の工夫、体験コンテンツの提供などがあります。
また、自社サイトを充実させ、インターネットを利用した顧客獲得の強化を図る必要があるでしょう。