コロナ禍の宿泊事業と今後の課題について解説!
コロナ禍により、宿泊事業が低迷していた中、行動制限・マスクの着用などの緩和で再び回復傾向が徐々にみられています。しかし、宿泊事業の競争激化により、新規顧客獲得への課題に向き合わなければいけません。そこで今回は、コロナ禍の宿泊事業と宿泊事業の課題について解説します。
宿泊事業とは?
宿泊施設には、旅館・ホテル・簡易宿所・下宿の4つの種類があります。
宿泊事業を行うには、旅館業法に基づき、各都道府県の保健所からの許認可が必要です。
そもそも宿泊とは、寝具を使用して、ホテル、旅館などの施設を利用することを指します。
・旅館業
旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と旅館業法に規定されています。
・ホテル営業
ホテル営業とは、洋式の構造および設備を主とする施設を設け、宿泊料を徴収し、人を宿泊させる営業を指します。玄関帳場が必要です。
・簡易宿所営業
簡易宿所営業は、宿泊する場所を多数人で共用する構造および設備を設けて、宿泊料徴収し、人を宿泊させる営業を指します。
・下宿営業
下宿営業は、施設を設け、1月以上の期間を単位とする宿泊料を徴収し、人を宿泊させる営業を指します。
コロナ禍の宿泊事業について
2020年ごろから新型コロナウイルス感染拡大により、緊急事態宣言に伴う不要不急の外出、インバウンド需要の大幅な低下により、宿泊事業の低迷が深刻化しました。
人々のライフスタイルが変化し、テレワークやオンライン会議なども急速に増えていま
す。
一方、コロナ以前は、観光庁の宿泊旅行統計調査(2021年「(令和3年)・年間値(速報値)」)によると、宿泊者数は、2017年〜2019年まで右肩上がりに上昇しています。
オミクロン株など、新型コロナウイルスの感染が急増した2021年には、日本人の宿泊者数は延べ3億1,076万人で、これはコロナ禍前の2019年比較で35.3%減となっています。
(参考:観光庁「宿泊旅行統計調査(令和4年3月・第2次速報、令和4年4月・第1次速報)」)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000475.html
「GoToトラベル」キャンペーンを実施するもすべての企業に集客効果があったと言えません。
「GoToトラベル」とは、個人の旅行者の代金を一部政府が負担するキャンペーンとなり、宿泊・日帰り旅行代金35%の負担や15%相当分の地域共通クーポンが付与されるものです。
宿泊事業については、緊急事態宣言が発令された2020年5月は、国内の宿泊施設客室稼働率が12.9%まで落ち込みました。
しかし、Go To トラベル開始から5カ月後の11月には46.1%まで徐々に取り戻しつつありました。
「参考:観光庁「宿泊旅行統計調査(令和2年10月・第2次速報、令和2年11月・第1次速報)」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000434.html
宿泊事業の課題
・人手不足
コロナ禍の業績不振により、宿泊事業に関連するホテル・旅館などは、従業員が離れていったところもめずらしくありません。
しかし、少ない従業員の中でも営業を続けている企業もあり、人手不足が生じているケースもあります。
最近の行動制限緩和やマスクの着用を個人の判断に求めるなど、コロナ前の生活が戻りつつある中、宿泊事業の人手不足が深刻化しています。
2022年は3年ぶりの行動制限がないゴールデンウィークを迎え、宿泊事業の人手不足に変わりはありません。
2023年は、さらなる人手不足が考えられるでしょう。
人手不足の原因は、コロナの行動制限緩和だけではありません。
宿泊事業は、夜勤の不規則な勤務形態などもあり、体力的な負担が大きい仕事です。
また、ハードな業務にもかかわらず、給与水準は高いとはいえません。
このような理由から、コロナ前から人手不足に陥っていたと考えられます。
また、人材不足になると、他の業務も兼任することもあり、慣れない仕事に戸惑いながら取り組まなければなりません。
そのため、業務の負担も大きくなり、従業員のモチベーションが低下する恐れもあるのです。
場合によっては、業務内容の多さにより、退職する人が増える可能性もあります。
低賃金・長時間労働の環境では、新たな人材の確保も難しくなるでしょう。
厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況」によると、ホテル・旅館業界の入職率、離職率がともに1位となっています。
(参考:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概況)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-2/dl/gaikyou.pdf
こうした悪循環にならないよう、企業の職場環境などの改善が必要です。
・顧客単価と収益の改善
コロナ禍により、ライフスタイルが変化する中で、宿泊事業においてはプライベート空間のあるスペースが求められる傾向にあります。
そのため、付加価値の提供を重視し、顧客獲得と顧客単価を上げていかなければなりません。
たとえば、客室に露天風呂を設置することやワンランク上の料理を提供するなどの工夫が必要です。
一方、収益の改善には、固定費を見直すことも大切です。従業員のオペレーションやITを活用した業務の効率化などが求められます。
・建物の老朽化
宿泊者の増減を問わず、建物は老朽化していくものです。建物の修繕や設備の交換が必要になる場合も少なくありません。
また、建物の老朽化が起きると、安全面を考慮した上で耐震性能を高める対策も必要になります。
過ごしやすさという観点からは、断熱性や気密性を向上させることが大切です。
新規顧客の獲得が見込めないのであれば、リニューアルオープンも検討することもあるでしょう。
そのため、費用対効果を考えながら、効果的な改善策が必要です。
・積極的なIT活用
ホテルのフロント業務には、非対面・非接触、業務効率化など、あらゆる目的にITツールの活用が必須となります。
たとえば、チェックイン・チェックアウトの処理を自動チェックイン機で行う方法やタブレット端末型のセルフチェックイン機、スマートフォンでのチェックインなどです。
これにより、フロントスタッフは、チェックイン、チェックアウト業務を大幅に削減できます。
・外国人観光客への対応
今後は、外国人観光客が増えていくと考えられます。宿泊事業では、外国の文化や言語に対応していかなければなりません。
特に英語を十分に話せる従業員の確保が必要ですが、まだまだ人材が不足しているところもあるでしょう。
まとめ
2020年ごろから新型コロナウイルス感染拡大により、緊急事態宣言に伴う不要不急の外出、インバウンド需要の大幅な低下により、宿泊事業の低迷が深刻化しました。
「GoToトラベル」キャンペーンを実施するもすべての企業に集客効果があったと言えません。
2022年は、3年ぶりの行動制限がないゴールデンウィークを迎え、一部の宿泊事業に回復傾向が見られるも、人材不足が課題となっています。
宿泊事業は、夜勤の不規則な勤務形態などもあり、体力的な負担が大きい仕事です。
そのため、労働環境の改善や業務改善など、早期の対応が求められます。
業務の改善には、積極的なIT活用も大切です。集客においても自社のサイトを充実させるなどのインターネットの活用も重要となります。
また、宿泊者の増減を問わず、建物は老朽化していくものです。建物の修繕や設備の交換が必要になる場合も少なくありません。
新規顧客の獲得が見込めないのであれば、リニューアルオープンも検討することもあるでしょう。
費用対効果を考えながら、効果的な改善策が必要です。