売却や賃貸も…別荘の相続対策について解説
別荘を相続したものの、使用する予定もなく売却を検討している方もいるのではないでしょうか。しかし別荘は、建物の状況や立地などを考慮すると、すぐに売れる物件は多くありません。所有し続けると、税金などの費用もかかり、悩まれている方も多いでしょう。
そこで今回は、別荘の相続対策や別荘を処分する前に確認すべきこと、売却せずに所有し続けるケースなどについて解説します。
別荘の相続について
1980年代半ばから90年代初頭に宅地開発が加速したため、別荘を購入する人が相次ぎました。
しかし、現在は別荘を相続したものの、使用する予定もなく持て余している人が少なくありません。
別荘を所有しているだけでも維持管理費・修繕費・固定資産税などの税金もかかります。別荘地の熱海市では、別荘等所有税が課されることでも知られています。
別荘を相続する際は、相続税が発生します。相続税は「相続税評価額」を用いて算出します。
相続税評価額とは、相続税を算出する際に基準となる課税価格です。不動産鑑定士による鑑定評価や固定資産税評価額を参考に算定されます。
土地の評価方法
土地の評価方法は、「路線価方式」と「倍率方式」があります。
路線価方式は、路線価の定められている1㎡当たりの宅地の価額のことです。路線価は千円単位で表示します。
路線価にその土地の面積を乗じて算出します。その際に奥行距離や間口距離、不整形地か否かなど、補正率を乗じて評価します。
国税庁のホームページに記載されている「路線価図・評価倍率表」で調べることが可能です。
別荘の土地部分は、地目を確認しなければなりません。
・宅地
地目が宅地である場合は、市街地は路線価地域、郊外は倍率地域となります。
・山林、原野
山林、原野の場合は、宅地に準じて評価することになります。
路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」があります。
倍率方式は、路線価が定められていない地域で固定資産税評価額をもとに算出します。
固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価する方法です。
建物の相続評価額は「固定資産税評価額」と同様です。
別荘の相続対策
別荘の相続対策には、以下のような方法があります。
賃貸する
宅地を他人に貸すと「貸宅地(かしたくち)」となり、評価額が下がります。
貸宅地の相続税評価額は、以下のように算出されます。
自用地評価額×(1-借地権割合)=貸宅地の相続税評価額
別荘を処分する前に確認すべきこと
使用していない別荘は、維持・管理費がかかります。その負担をなくすためには、別荘の処分が考えられます。
・管理会社に相談する
別荘の処分については、管理会社に相談することがあげられます。地元の買取業者を紹介してくれる場合もあります。
・買取専門の不動産業者に依頼する
買取専門の不動産業者に依頼するのも一つの方法です。中でも別荘の買取に強い不動産業者がよいでしょう。
・複数の不動産業者を比較する
不動産業者を選ぶ際は、一社のみでは売却価格などの相場がわかりません。
複数の不動産業者を比較しながら、査定を依頼することが大切です。
不動産一括査定サイトを利用すると、簡単に複数の不動産業者に査定を依頼できます。
・空き家バンクを利用する
空き家バンクを利用する方法もあります。空き家バンクとは、地方自治体が運営している空き家を登録できるサイトです。
空き家を売りたい人が空き家バンクに登録し、購入希望者が現れると売買について進めていきます。いわば、空き家のマッチングサービスのような役割を果たしています。
空き家バンクに登録する際は「無料」となっているところも嬉しいポイントです。
ただし、必ずしも買い手がつくとは限りません。
・知人に譲る
どうしても別荘が売れない場合は、知人に譲るのも一つの方法です。贈与する際は、贈与税がかかることをあらかじめ説明しておくことが大切です。
・費用を払って別荘を処分する
不動産の処分費用を払うことで処分できる方法もあります。
別荘の相続放棄
相続放棄は、被相続人の一切の権利を放棄するため、空き家となっている別荘のみを相続放棄することは困難です。
そのため、被相続人の相続財産をすべて放棄するということであれば、別荘も含めて相続放棄が可能になります。
つまり、負の財産だけを相続放棄することができず、すべての権利を放棄するということです。
相続人が複数人いる場合には、遺産分割協議を行う必要があります。
遺産分割協議は、必ず全員で行わなければなりません。遺産分割の期限はありませんが、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に相続税の申告を行う必要があります
相続財産の中に別荘の金融資産などがあれば、相続放棄をするかどうか見合わせる場合もあります。
金融資産の額によって、別荘の維持・管理費が支払える場合があるためです。
相続放棄を行う際は、家庭裁判所に相続放棄する旨を申述する必要があります。
相続放棄の必要書類は、以下のとおりです。
・相続放棄申述書
・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の住民票
・相続人の戸籍謄本
・収入印紙800円
相続放棄は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります。(熟慮期間内)
この期間をすぎると単純承認を行ったとみなされます。単純承認とは、被相続人の相続財産を無条件ですべて相続することです。
相続放棄を行った場合でも自分以外の相続人がいない場合、民法940条により別荘の管理者になるケースもあるため、注意が必要です。
売却せずに所有し続けるケース
・セカンドハウスとして活用する
セカンドハウスとは、自宅以外に生活するため、定期的に住む場所を指します。
別荘では、税制上の優遇措置は受けられないですが、セカンドハウスは居住するための住まいであるので税制上の優遇措置は受けられるのです。
たとえば、不動産取得税や固定資産税の減額などがあります。
ただし、居住用財産として認められるためには、最低でも月1日以上、居住する実態がなければなりません。
・ゲストハウスとして活用する
ゲストハウスは、ドミトリー(相部屋)や共用スペースなどがある宿泊施設の形態です。1日単位で宿泊することができます。アメニティなどはなく、宿泊費を抑えたい方には最適です。
最近では、新型コロナの規制が緩和され、外国人観光客のニーズが高まっています。
売却せずに所有し続ける場合は、維持費がネックになる場合が多いです。
そのため、相続人が複数いる場合は共有名義にする方法もあります。
共有名義の場合は、各共有者が持分割合に応じて維持管理費を支払うことになります。
まとめ
別荘の相続対策には、賃貸や売却する方法があります。ただし、宅地を他人に貸すと「貸宅地(かしたくち)」となり、評価額が下がります。
売却する際は、管理会社に相談するか、買取専門の不動産業者に依頼するのも一つの方法です。
不動産業者を選ぶ際は、一社のみでは売却価格などの相場がわかりません。
複数の不動産業者を比較しながら、査定を依頼することが大切です。
また、空き家バンクを利用するのも一つの方法です。
空き家となっている別荘のみを相続放棄することは難しく、被相続人の相続財産をすべて放棄するということであれば、別荘も含めて相続放棄が可能になります。
一方、売却せずに所有し続けるケースとしては、セカンドハウスやゲストハウスとして活用するのも一つの方法です。