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事業承継税制の対象外となる資産管理会社について解説

 

会社が事業を永続させるためには、後継者の存在が不可欠です。

事業の継続に必要な資産を前の経営者から後継者に引き継ぐことを事業承継といいます。

承継する資産には自社株が含まれます。この自社株の承継に際して多額の贈与税や相続税がかかることが円滑な事業承継を困難にしていました。

このような問題を解決するために、事業承継税制が設立されました。

この記事では、事業承継税制やその対象外とされている資産管理会社との関連について解説します。

事業承継税制とは?

 

国税庁によれば、事業承継税制とは以下のとおりです。

事業承継税制は、円滑化法に基づく認定のもと、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予する制度です。

事業承継税制について詳しく解説しましょう。

従来の事業承継では、承継時に多額の贈与税や相続税が発生することがネックとなっていました。

これらの問題を解決し、中小企業における円滑な事業承継及び永続的な事業運営を支援するために設立されたのが事業承継税制です。

上記の国税庁の説明のとおり、事業承継のために後継者が取得した自社株にかかる贈与税・相続税が猶予されます。猶予される条件を一定期間満たすことで、猶予された税額が免除されます。

 

事業承継税制の要件

事業承継税制は相続税・贈与税の負担を軽減する便利な制度ですが、利用にあたっては厳格な要件が定められています。参考サイト

大別すると要件は以下の4つです。

  1. 先代の経営者が満たすべき要件
  2. 後継者が満たすべき要件
  3. 会社が満たすべき要件
  4. 事業承継開始後5年間は満たすべき要件

これらの要件のうち、3つ目の「会社が満たすべき要件」はさらに以下の要件に分けられます。

  1. 中小企業者であること(業種別に基準となる資本金・従業員数が異なる)
  2. 非上場企業であること
  3. 医療法人、風俗営業会社に該当しないこと
  4. 資産管理会社に該当しないこと

上記の要件をすべて満たさないと会社として要件を満たすことができません。

 

要件「資産管理会社に該当しないこと」とは?

資産管理会社とは、営業活動を行う通常の会社と異なり、不動産や有価証券を保有する資産家の資産管理を目的として設立される会社です。

事業承継税制の要件のうち「会社が満たすべき要件」に、「資産管理会社に該当しないこと」が含まれています。

つまり、中小企業であっても資産管理会社は事業承継税制の対象外になるということです。

事業承継税制は、中小企業が継続的に事業を運営できるように、事業承継を支援することを目的としていますので、事業実態のない資産管理会社は支援の対象から外れることになっているのです。

しかし、資産管理会社であっても子供などの親族に会社を承継したいと考えている資産家の方はおられるでしょう。

設立の目的が資産家の資産管理であっても、事業承継税制の対象になる場合があります。

資産管理会社の形式要件

資産家の資産管理が目的である会社であっても資産管理会社の形式要件に該当しなければ、事業承継税制の対象となります。

事業承継税制では、資産管理会社について資産保有型会社と資産運用型会社に区分しています。

それぞれに形式要件がありますので、確認しましょう。

ちなみに後述する形式要件に該当した場合には必ず資産管理会社とみなされるわけではありません。

形式要件の次に事業実態要件があり、それに該当すれば、資産管理会社とみなされず、事業承継税制の対象に含まれます。

 

資産保有型会社

資産保有型会社の形式要件とは、総資産に占める特定資産の割合が70%以上である会社です。

計算式は以下のとおりです。

特定資産の帳簿価額の合計額/資産の帳簿価額の合計額≧70%

ここで問題となる特定資産とは何でしょうか?

 

特定資産とは?

経営承継円滑化法施行規則には以下の資産について特定資産と定義しています。

 

  • 国債/地方債証券・株券・その他金融商品取引法に規定する有価証券と他の持株会社の持分
  • 対象となる中小企業の保有不動産で、現在は自社で使用していないもの
  • 会員権(ゴルフ/スポーツクラブ/リゾート等)など施設の利用に関する権利
  • 動産(絵画/彫刻/工芸品/骨董品等)や貴金属(金/銀等)、宝石など
  • 現預貯金等

 

このように事業活動ではなく、資産収入をもたらす資産を特定資産と定義しています。

つまり、企業本来の事業活動のための資産よりも資産収入のための資産が多く、その割合が70%を超える場合に資産保有型会社に該当します。

当然ながら、資産家の資産管理のみを目的とする会社の場合には、資産保有型会社に該当する可能性が高くなります。

資産運用型会社

資産運用型会社の形式要件とは、売上に占める特定資産運用収入の割合が75%以上である会社です。

計算式は以下のとおりです。

特定資産の運用収入/総収入金額≧75%

ここで問題となる特定資産の定義は経営承継円滑化法施行規則の通りで、運用収入として想定されるのは不動産の賃料収入や株式の配当などです。

総収入金額とは、売上高・営業外収益・特別利益の合計額です。

企業本来の事業活動による収入よりも資産収入が多く、それの割合が75%を超える場合に資産運用型会社に該当します。

 

不動産を投資用ではなく、宿泊施設として運営している場合

宿泊施設として運営する場合、特定資産に含まれる不動産収入ではなく旅館業の事業収入になります。

したがって、旅館業では資産運用型会社に該当せずに事業承継税制の対象となりやすいというメリットがあります。

事業収入の比率を上げるために不動産を活用して事業をすることは重要です。

そこでおすすめしたいのが貸別荘の運用です。

すでに別荘を保有している人であれば、簡単に始めることができますし、旅館業を開業すれば、事業収入として収益を上げることができます。

資産管理会社の事業実態要件

先述のとおり、形式要件で資産保有型会社や資産運用型会社に該当する場合には事業承継税制の適用対象外となります。

しかし、その場合でも会社として事業を行っている事業実態が認められると、資産保有型会社や資産運用型会社に該当しないとみなされ、事業承継税制の適用対象となります。

 

事業実態の要件は以下の3つです。

  • 常時雇用する従業員が5名以上
  • 事業を3年以上継続している
  • 事務所を所有または賃貸

上記すべての要件を満たすことで、事業実態が認定されます。

 

常時雇用する従業員が5名以上

ここでいう「従業員」として認められる基準は社会保険に加入していることです。

反対に以下に該当する場合には「従業員」に該当しません。

  • パートやアルバイト
  • 後継者
  • 後継者と生計を一にする親族
  • 会社役員

ちなみに事業承継税制の要件の一つである「資産管理会社に該当しないこと」は納税猶予の取消理由となります。

こちらの取消理由には期間制限がないので、従業員の定員を満たさなくなり、資産管理会社に該当するようになった場合には、猶予されていた贈与税や相続税の納税義務が発生します。

したがって、会社が継続する限り、常時雇用する従業員の数は5人を下回ってはいけません。

 

事業を3年以上継続している

ここでいう「事業」とは、租税特別措置法施行規則の第23条の9第5項で規定される業務を指します。

租税特別措置法施行規則の第23条の9第5項の内容は以下のとおりです。

  • 商品販売等(商品の販売、資産の貸付け(経営承継受贈者及び当該経営承継受贈者と施行令第四十条の八第十一項に規定する特別の関係がある者に対する貸付けを除く。)又は役務の提供で、継続して対価を得て行われるものをいい、その商品の開発若しくは生産又は役務の開発を含む。次号において同じ。)
  • 商品販売等を行うために必要となる資産(施行令第四十条の八第六項第一号ハ及び第二号ハの事務所、店舗、工場その他これらに類するものを除く。)の所有又は賃借
  • 前二号に掲げる業務に類するもの

資産の貸付には、不動産の賃料収入が含まれます。

賃貸物件を有する会社は先述の資産保有型会社や資産運用型会社に該当しますが、このような場合であっても3年以上継続して事業を行っていれば、事業実態が認められます。

事業実態を認めてもらいやすい投資物件として貸別荘があります。貸別荘であれば、旅館業に分類され、不動産収入というよりも事業収入という性質があるので、事業承継が認められやすくなります。

 

事務所を所有または賃貸

正確に言えば、事務所や店舗、工場などの固定施設について所有している、または賃貸していることです。

こちらの固定施設には自宅や事業外の施設は認められません。

一般的な企業のようにオフィスを賃貸して、従業員が勤務している状態が必要になります。

しかし、先述の2つの要件と比べると要件を満たすハードルは低いといえます。

資産管理会社の判定時期

先述の形式要件や事業認定についての判定時期、つまり資産管理会社に該当するかどうかを判定する時期について解説します。

判定時期は、後継者へ自社株を贈与・相続する直前の事業年度の開始の日から、納税猶予の期限確定日までの期間のうちいずれかの日です。

この判定時期に関しては、資産保有型会社と資産運用型会社の違いはありません。

ただし、平成31年度の税制改正によって、資産管理会社の適用要件が緩和されました。

これによれば、偶発的な要因によって、資産管理会社に該当しても、該当した日から6か月以内に該当しなくなった場合は納税猶予の取消理由に該当せず、猶予された贈与税・相続税の納税義務がただちに発生するわけではなくなりました。

まとめ

 

通常、資産管理会社は事業承継税制の対象となりません。

しかし、資産家が自身の資産の管理を目的とする会社を承継したい場合に、形式要件で資産管理会社に該当しなければ事業承継税制の対象となることがあります。

また、形式要件に該当しても、事業実態がある場合には、対象となります。

事業承継税制の対象となれば、事業承継時の贈与税・相続税が猶予または免除されますので、積極的に活用しましょう。

 

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