個人保有の不動産を資産管理会社に移転するメリットやコストを解説
資産管理会社とは?
資産管理会社の概要
資産管理会社とは、不動産や有価証券などの資産を所有している人が、自らの資産の管理を目的として設立する会社です。
通常の会社とは異なり、株式の発行や銀行からの資金調達、事業を運営するための営業活動は行わず、あくまでもオーナーの資産管理を目的として設立されます。
会社の設立手続きや会計の管理、契約などは通常の事業会社と同様ですが、資産家のオーナーが自身の利益のために設立するので、「プライベートカンパニー」と呼ばれることもあります。
個人で資産を管理せずに、あえて資産管理会社を設立するのは、主に税制面で優遇が受けられるからです。
そのため、資産家の方は資産管理会社を設立することで、個人ではなく法人で資産の管理を行っています。
個人から資産管理会社へ不動産を移転する
資産管理会社へ不動産を移転するためには、まず資産管理会社を設立する必要があります。
合同会社の設立の流れや諸契約は通常の事業会社とほとんど変わりません。
資産管理会社は通常資産家本人の名義で設立されますが、子供などの親族名義で設立することもあります。
資産管理会社の設立後は、個人で保有する不動産の所有権を資産管理会社へ移管します。
所有権を移転させる方法としては、個人が法人に不動産を売却する形が最も一般的ですが、法人ー個人間で金銭消費貸借契約を締結する方法や現物出資という方法をとることも可能です。
いずれにしても不動産の売却価格は税理士などの専門家を交えて適正価格を決定します。
資産管理会社へ不動産を移転するメリット
冒頭でお伝えしたように個人が資産管理会社を設立し、不動産を移転するのは税制上のメリットがあるからです。
それでは、具体的にどのような税制面での恩恵があるのでしょうか?また税制面以外のメリットはあるのでしょうか?
以下では、個人から法人へ不動産を移転するメリットについて解説します
所得の分散
個人で不動産を保有する場合には、賃料収入が多いほど所得が増えます。
日本では、所得税に累進課税制度を採用しているので、所得が多いほど所得税の税率が高くなります。
所得税の最高税率は45%ですので、最大で収入の半分程度を税金として納めなければなりません。
つまり、個人で不動産を保有している場合には、賃料収入が増えるほど所得税税率が高くなるのです。
家族に給与を支払える
仮に個人の賃料収入を1000万円と仮定すると、33%の税率が課されることになります。
しかし、資産管理会社を設立し、家族を役員として迎えることで、家族に給与を支払うことができます。
本来は資産家一人で受け取っていた所得を家族に分散することができるのです。
所得が分散されると、全体の所得税率は低くなります。
資産管理会社に移転するとメリットがある例
例えば、1000万円の賃貸収入のうち、資産家個人の所得を500万円、配偶者を500万円と仮定すると、所得税率はそれぞれ20%ですので、合計の所得税が削減されます。
また、資産管理会社が収める法人税を考慮しても税金の節約効果があります。
個人から資産管理会社に不動産を移管することで賃料収入は会社のものとなります。
現在、法人税の実効税率は23.4%ですので、所得税の税率よりも低く、所得税の節税効果があります。
相続対策
個人で不動産を保有している場合には賃料収入は資産家自身のものになります。
しかし、資産管理会社を設立すると賃料収入は会社のものとなり、会社の収入から家族に役員報酬を支払うことが可能です。
これによって、資産家の資産を家族に移転するという相続対策ができます。
通常、個人の資産を家族に移転する場合には最大で55%の贈与税が課税されますが、資産管理会社から家族に給与を支払うことで、低い税率の所得税が適用されます。
資産管理会社を通じて、家族に移転した資産は相続税の納税資金とすることで、相続対策となります。
損益計算の範囲が広い
損益通算とは、複数の事業の損失と利益を合算することです。
例えば、不動産を保有し、賃料収入で黒字となっても、株式投資や他の事業によって赤字となった場合には、赤字の分だけ黒字を圧縮することで、課税所得を減少させ、支払う税金を少なくすることができます。
損益通算は個人にも認められていますが、法人は範囲が広く設定されています。
例えば、不動産投資で1,000万円の利益、株式投資で500万円の損失が生じている場合には、個人は不動産投資の1,000万円分にかかる税金を支払います。
一方で法人は1,000万円-500万円=500万円にかかる税金で済みます。
この他にも法人の事務所の賃料や出張費などで利益を圧縮できるので、節税効果が期待できます。
資産管理会社へ不動産を移転する時にかかるコスト
個人から資産管理会社へ不動産を売却する時に一定のコストがかかります。
これらのコストは通常の不動産売買取引で発生するものと同様です。
しかし、個人から資産管理会社へ不動産を売却する場合には、実質的に売り手と買い手が同じですので、通常の取引では売り手と買い手の双方が負担するコストをすべて資産家が負担します。
したがって、通常の取引よりもコストが大きくなる可能性があります。
譲渡所得税
譲渡所得税は資産家が個人として支払う税金です。
保有する土地や建物を売却して得た利益を譲渡所得といいます。
譲渡所得には、所得税や住民税などの税金が課されます。
ただし、不動産の売却価格=譲渡所得となるわけではありません。
不動産の購入時には取得費用がかかっていますし、売却時にも費用がかかっているかもしれません
これらの費用を売却価格から差し引いて譲渡所得を求めます。
譲渡所得税の計算式
譲渡所得=不動産の売却価格-(不動産の取得費用+売却時にかかった費用)
印紙税
印紙税とは、経済的取引に際して作成される契約書に課税される文書課税です。
不動産売買の場合には、売り手(資産家本人)と買い手(資産管理会社)で不動産売買契約書を作成し、契約書に「収入印紙」を貼って、消印します。
この収入印紙の費用は不動産の売却価格によって異なります。
印紙税法では、契約書の作成名義人に印紙税の納税義務が発生するので、通常の取引では売り手と買い手が連帯して印紙税の納税義務を負います。
しかし、資産管理会社への不動産移転の場合には、実質的に売り手と買い手が同じですので、分担は関係なくすべて資産家の負担となります。
登録免許税
登録免許税は買い手である資産管理会社が負担する費用です。
法務局には不動産の所有権や抵当権の有無、所在地、用途などが記載してある登記簿が保管されています。
不動産を購入して新たな所有者となると、その事実を登記簿に記載する登記という手続きが必要になります。
登記の時には登録免許税という国税を収める必要があり、税額は不動産の評価額によって異なります。
登録免許税の計算式
登録免許税額=固定資産税評価額×税率
※固定資産税評価額は不動産の購入価格の70%が目安です。
消費税
通常、不動産の購入には消費税が課税されます。
不動産の場合、土地は非課税ですが、建物には課税されます。
2022年2月8日現在、消費税の税率は10%です。不動産は軽減税率の対象外ですので、建物の購入には10%の消費税が課されることになります。
しかし、不動産の購入に消費税が課税されるのは、売り手が事業者の場合のみです。
資産家が個人として不動産を資産管理会社に売却する場合には、消費税は発生しません。
不動産取得税
不動産取得税は買い手である資産管理会社が負担する費用です。
土地や家屋の購入など不動産を取得した時に買い手が負担する地方税です。
「取得」税という名称通り、有償・無償に関係なく支払いの義務が発生します。
不動産取得税の計算式
不動産取得税=課税標準額×税率
※税率は原則として4%ですが、2021年3月31日までに取得した土地と住宅は3%となっています。
まとめ
資産管理会社を設立し、個人の不動産を移転することで、主に税制面で恩恵を受けることができます。
安定した賃料収入を得るために不動産投資を始める人が増えています。不動産投資でおすすめなのが貸別荘の運営です。
コロナ禍で郊外にセカンドハウスを購入したり、都内の喧騒を逃れて別荘でのリモートワークを行う人が増えているようです。
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