「民泊業を始めるには?許可の種類と取得方法をわかりやすく解説」

「民泊を始めたいけれど、どんな許可が必要か分からない」「複雑な手続きに不安がある」そんな疑問や悩みを抱えていませんか?
この記事では、民泊を合法的に運営するために必須となる「住宅宿泊事業法(民泊新法)」「旅館業法」「国家戦略特区法」の3つの許可・届出について、それぞれの違いから取得要件、具体的な申請方法、必要書類、さらには開業後の注意点までを徹底解説します。無許可営業のリスクを回避し、あなたの民泊に最適な道筋を見つけるための全てが、この1記事で明確になります。
まずは最短ルートを知りたい方へ:物件・地域・営業形態に合わせて「最適な許可の取り方」を提案します。
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1. 民泊業を始める前に知るべき許可の基本
民泊許可はなぜ必要?無許可営業の法的リスク
民泊を事業として行う場合、原則として国の定める許可や届出が必須です。これは、宿泊者の方々の安全確保、衛生管理の徹底、そして近隣住民とのトラブル防止といった、多岐にわたる公共の利益を守るために設けられた重要なルールだからです。
無許可で民泊営業を行った場合、法的リスクは非常に高く、事業者にとって深刻な結果を招く可能性があります。主な法的リスクとしては、以下の点が挙げられます。
- 住宅宿泊事業法違反(民泊新法):届出をせずに住宅宿泊事業を行ったり、報告などの義務に違反した場合は、行政指導・業務停止命令や罰則(罰金等)の対象となることがあります。適用や量刑は改正・自治体運用で変わるため、最新の条文と所管窓口の案内を確認してください。
- 旅館業法違反:許可を得ずに反復継続して宿泊サービスを提供すると無許可営業に該当し、行政処分や罰則(罰金等)の対象となる場合があります。具体的な扱いは地域や改正状況で異なるため、所轄保健所等へ事前確認してください。
- 消防法違反:適切な消防設備を設置せず、消防計画の届出も怠った場合、罰則の対象となるだけでなく、万が一の火災発生時には人命に関わる重大な事故につながる恐れがあります。
- 建築基準法違反:用途変更の確認申請をせずに宿泊施設として利用した場合、罰則の対象となることがあります。
- 近隣住民とのトラブル:騒音やゴミ出しの問題などから、行政指導や営業停止命令につながるケースもあります。
これらの罰則だけでなく、無許可営業が発覚した場合、社会的な信用を失い、今後の事業展開に大きな支障をきたすことになります。安全で安心な民泊運営のためにも、必ず適切な許可・届出を行いましょう。
「民泊」の定義と許可制度
「民泊」とは、個人の住宅やマンションの一室などを使って旅行者に宿泊サービスを提供することを指します。ただし、友人を泊めるような行為は対象外で、反復して対価を得る宿泊サービスが法律上の「民泊」として許可・届出の対象になります。
日本の民泊許可制度は、次の3つの法律に基づいており、それぞれ対象となる施設や営業形態、取得すべき許可・届出が異なります。
| 許可制度の根拠法 | 主な対象施設・営業形態 | 取得すべき許可・届出 |
| 住宅宿泊事業法(民泊新法) | 法人・個人が所有する住宅やマンションの一部・全部を利用し、年間営業日数180日以内での営業 | 住宅宿泊事業の届出 |
| 旅館業法 | ホテル、旅館、簡易宿所(ゲストハウス、ホステルなど)、下宿といった宿泊施設 | 旅館業(簡易宿所営業など)の許可 |
| 国家戦略特別区域法(特区民泊) | 特定の区域内(国家戦略特区)において、条例で定める要件を満たす施設での営業 | 特定認定(特区民泊)
|
これらの制度は、それぞれ異なる目的と規制内容を持っています。例えば、住宅宿泊事業法は「一般の住宅を活用した民泊」を想定しているのに対し、旅館業法は「宿泊施設としての事業性」を重視しています。また、国家戦略特別区域法は、特定の地域でのみ適用される特別な制度です。
ご自身の提供したい民泊の形態や規模、営業日数によって、どの許可制度が最適かが変わってきます。次の章では、これらの許可制度について、それぞれの詳細と取得要件を徹底的に比較解説していきます。
2.あなたの民泊に合うのはどれ?許可の種類を徹底比較
民泊を始めるにあたり、どの許可制度を選ぶかは、あなたの事業計画や物件の状況によって大きく異なります。ここでは、主要な3つの民泊許可制度である住宅宿泊事業法(民泊新法)、旅館業法(簡易宿所営業)、そして国家戦略特別区域法(特区民泊)について、それぞれの特徴、メリット・デメリット、そして取得要件を詳しく比較解説します。
住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出
民泊新法の概要と年間営業日数
住宅宿泊事業法、通称「民泊新法」は、2018年6月に施行された比較的新しい法律です。この法律は、自宅や空き家などの「住宅」を活用して宿泊サービスを提供することを目的としており、特定の要件を満たせば、都道府県知事等への届出を行うことで民泊を運営できます。
民泊新法における最大の特徴は、年間営業日数が180日を上限とする点です。この日数制限があるため、通年での営業はできませんが、手軽に民泊を始めたい方や、自宅の一部を活用したい方には適した制度と言えるでしょう。
届出のメリット・デメリットと取得要件
民泊新法による届出のメリットとデメリットを以下にまとめました。
| 項目 | 詳細 |
| メリット |
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| デメリット |
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民泊新法における主な取得要件は以下の通りです。
- 住宅の要件:人の生活の本拠として使用されている、または使用されていた建物であること。賃貸物件の場合は、賃貸借契約書で民泊利用が許可されている必要があります。
- 家主居住型・家主不在型:家主が物件に居住しながら民泊を行う「家主居住型」と、家主が不在の「家主不在型」があります。家主不在型の場合、住宅宿泊管理業者への管理委託が義務付けられています。
- 消防設備の設置:住宅用火災警報器、消火器などの設置が義務付けられています。
- 衛生管理:清潔な寝具の提供、換気の確保、害虫駆除など、衛生的な環境を保つための措置が求められます。
- 宿泊者への説明:緊急時の連絡先、避難経路、騒音に関する注意喚起など、宿泊者に必要な情報を提供する必要があります。
旅館業法(簡易宿所営業)の許可
旅館業法による民泊の定義と特徴
旅館業法は、ホテルや旅館、簡易宿所など、宿泊施設全般を規制する法律です。この法律における「簡易宿所営業」は、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を設けて、宿泊させる営業を指し、カプセルホテルやゲストハウスなどがこれに該当します。民泊においても、この簡易宿所営業の許可を取得することで、合法的に宿泊サービスを提供することが可能です。
旅館業法に基づく簡易宿所営業の最大の特徴は、年間営業日数の制限がないことです。これにより、通年で安定した収益を目指す本格的な民泊事業に適しています。ただし、届出制の民泊新法とは異なり、許可制であるため、建築基準法や消防法、旅館業法が定める厳しい構造設備基準を満たす必要があります。
簡易宿所許可のメリット・デメリットと取得要件
旅館業法(簡易宿所営業)の許可取得におけるメリットとデメリットを以下に示します。
| 項目 | 詳細 |
| メリット |
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| デメリット |
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簡易宿所営業の主な取得要件は以下の通りです。
- 建築基準法への適合:用途変更(住宅から簡易宿所へ)が必要な場合が多く、建築確認申請や完了検査を受ける必要があります。耐震性や採光、換気などの基準を満たす必要があります。
- 消防法への適合:自動火災報知設備、誘導灯、避難経路の確保など、防火対象物としての厳しい消防設備基準を満たす必要があります。消防署の検査も必須です。
- 旅館業法に基づく構造設備基準:
- 客室の床面積:原則として、宿泊者1人あたり3.3平方メートル以上(自治体により異なる場合あり)。
- フロント・帳場:原則として設置が義務付けられています。
- 換気、採光、照明、防湿、排水設備:適切な設備が求められます。
- 入浴設備、便所:宿泊者の衛生を確保するための設備が必要です。
- 衛生管理:食品衛生法や公衆浴場法に準じた衛生管理が求められる場合があります。
- 周辺環境への配慮:近隣住民への騒音対策や、犯罪防止対策などが求められます。
国家戦略特別区域法(特区民泊)の認定
特区民泊の概要と認定対象地域
国家戦略特別区域法に基づく「特区民泊」は、特定の国家戦略特別区域内でのみ認められている民泊制度です。この制度は、旅館業法の規制を緩和し、外国人観光客の増加に対応するために設けられました。
特区民泊の特徴は、年間営業日数に制限がないこと、そして最低宿泊日数が2泊3日以上と定められている点です。これにより、中長期滞在の外国人観光客をターゲットとした民泊運営に適しています。
しかし、最大の制約は、認定を受けられる地域が限定されていることです。現在、特区民泊の認定が可能な主な地域は、東京都大田区、大阪市、福岡市、北九州市など、政府が指定した国家戦略特別区域に限られています。これらの地域以外で特区民泊を行うことはできません。
認定のメリット・デメリットと取得要件
特区民泊の認定取得におけるメリットとデメリットを以下にまとめました。
| 項目 | 詳細 |
| メリット |
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| デメリット |
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特区民泊の主な取得要件は以下の通りです。
- 対象地域:国家戦略特別区域内の自治体が条例で定める区域内の物件であること。
- 最低宿泊日数:2泊3日以上の滞在を原則とすること。
- 住宅の要件:居室の床面積が25平方メートル以上であることなど、自治体ごとの条例で定める基準を満たす必要があります。
- 衛生管理:清潔な寝具の提供、換気の確保、害虫駆除など、適切な衛生管理措置が求められます。
- 外国人対応:外国語での案内表示や、通訳体制の確保など、外国人宿泊者への対応が求められる場合があります。
- 緊急時の対応:火災や災害時の避難経路の明示、緊急連絡体制の整備などが義務付けられています。
- 近隣住民への配慮:騒音対策やゴミ出しルールの徹底など、近隣住民とのトラブルを避けるための措置が必要です。
3.民泊許可取得までの具体的なステップと必要書類
民泊事業を始めるにあたり、適切な許可や届出を取得するプロセスは、事業の安定性と合法性を確保する上で最も重要なステップです。ここでは、各許可制度における申請先、標準的な取得期間、必要となる書類、そして申請にかかる費用や関連する税金について詳しく解説します。
各許可の申請先と標準的な取得期間
民泊の種類によって申請先や手続きの期間は大きく異なります。事前にこれらの情報を把握しておくことで、スムーズな事業開始に繋がります。
| 許可の種類 | 主な申請先 | 標準的な取得期間(目安) |
| 住宅宿泊事業法(民泊新法) | 届出住宅の所在地を管轄する都道府県知事等(保健所設置市や特別区の場合はその長)。 原則として、管轄する保健所または民泊制度運営システムを通じてオンラインで届出。 |
数週間~1ヶ月程度 (書類不備がなければ比較的迅速。ただし、自治体による審査期間や事前相談の有無で変動。) |
| 旅館業法(簡易宿所営業) | 営業所の所在地を管轄する都道府県知事等(保健所設置市や特別区の場合はその長)。 原則として、管轄する保健所に申請。 |
3ヶ月~半年以上 (事前相談、建築基準法や消防法の適合確認、現地調査など多くのステップが必要なため、期間を要する。) |
| 国家戦略特別区域法(特区民泊) | 認定住宅の所在地を管轄する特定自治体(例:大阪市、東京都大田区など)。 各自治体の窓口に申請。 |
2ヶ月~4ヶ月程度 (自治体による条例の確認、事前相談、現地調査などが必要。自治体ごとの運用で期間は変動。) |
特に旅館業法に基づく許可は、建築基準法や消防法など、多岐にわたる法令遵守が求められるため、専門家(建築士、行政書士など)への相談を早期に行うことが推奨されます。
民泊許可申請に必要な共通書類と個別書類
民泊の許可や届出には、多くの書類準備が必要です。ここでは、各制度に共通して必要となる一般的な書類と、それぞれの制度で個別に求められる書類をまとめました。
民泊許可申請に必要な共通書類(一般的なもの)
以下の書類は、どの許可制度においても、物件や申請者の状況に応じて準備が求められることが多い基本的なものです。
- 申請者(法人であれば役員全員)の住民票または身分証明書
- 物件の登記事項証明書(建物):物件の所有関係や構造を確認するために必要です。
- 建物の平面図:部屋の配置、面積、用途などを明示します。
- 消防法令適合通知書:消防署による現地調査を経て発行されます。安全性の確保に不可欠です。
- 賃貸物件の場合:賃貸借契約書の写し、および転貸承諾書:物件の所有者(大家さん)から民泊利用の許可を得ていることを証明します。
- 分譲マンションの場合:管理規約の写し、および管理組合の承諾書:マンション管理規約で民泊が禁止されていないこと、および管理組合から許可を得ていることを証明します。
各許可制度で個別に求められる書類
共通書類に加えて、各許可制度の特性に応じた固有の書類提出が必要です。
住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出
- 住宅宿泊事業届出書:所定の様式に必要事項を記入します。
- 誓約書:法令遵守を誓約する書面です。
- 宿泊者名簿の備え付け状況を示す書類:宿泊者の本人確認方法や名簿の管理方法を説明します。
- 周辺地図:物件の周辺環境を示します。
- 清掃体制の概要:衛生管理の計画を説明します。
- 住宅宿泊管理業者に委託する場合:住宅宿泊管理業務委託契約書の写し:管理を外部に委託する場合に必要です。
旅館業法(簡易宿所営業)の許可
- 旅館業営業許可申請書:所定の様式に必要事項を記入します。
- 構造設備の概要図:施設の詳細な構造や設備を図面で示します。
- 施設の平面図:客室、玄関帳場(フロント)、浴室、トイレなどの配置を示します。
- 消防設備等設置計画届出書:消防設備の設置計画を詳細に示します。
- 水質検査結果書:井戸水を利用する場合に必要です。
- 食品衛生責任者の資格を証する書類:飲食を提供する場合に必要です。
- 周辺地図:物件の周辺環境を示します。
国家戦略特別区域法(特区民泊)の認定
- 特定認定申請書:自治体所定の様式に記入します。
- 事業計画書:民泊事業の具体的な運営計画を説明します。
- 宿泊施設の構造設備に関する書類:施設の構造や設備が条例の基準を満たしていることを示します。
- 消防法令適合通知書:消防署による適合確認が必要です。
- 近隣住民への説明状況を示す書類:近隣住民への説明会実施報告書や説明内容をまとめたものなど。
- 宿泊者名簿の管理方法に関する書類:宿泊者の本人確認方法や名簿の管理方法を説明します。
これらの書類は、申請先の自治体や状況によって追加や変更が生じる場合があります。必ず事前に管轄の自治体や保健所に確認し、最新の情報を入手するようにしましょう。
申請費用と関連する税金について
民泊事業を開始し、運営していく上で、許可申請にかかる費用だけでなく、継続的に発生する税金についても理解しておくことが重要です。
民泊許可申請にかかる主な費用
申請手数料は、許可の種類や自治体によって異なります。
| 費用項目 | 概要 | 目安 |
| 住宅宿泊事業法(民泊新法) | 届出自体に手数料はかかりません。 | 0円 |
| 旅館業法(簡易宿所営業) | 営業許可申請手数料 | 約2万円~4万円(自治体により異なる) |
| 国家戦略特別区域法(特区民泊) | 認定申請手数料 | 約2万円~4万円(自治体により異なる) |
| その他専門家への依頼費用 | 行政書士、建築士、消防設備士などへの相談・依頼費用 | 数万円~数十万円(依頼内容による) |
| 消防設備設置・点検費用 | 消火器、火災報知器などの設置や点検にかかる費用 | 数万円~(設備規模による) |
これらの費用は初期投資として考慮しておく必要があります。特に旅館業法に基づく許可は、建築基準法や消防法への適合工事が必要となる場合があり、その費用が大きくなることもあります。
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民泊運営に関連する主な税金
民泊で得た収入には、適切に税金が課されます。事前に税務上の取り扱いを理解し、計画的に事業を進めましょう。
- 所得税・住民税:民泊による収益は、原則として不動産所得または事業所得として課税対象となります。事業規模や運営形態によってどちらに分類されるかが変わるため、税理士に相談することをお勧めします。
- 消費税:課税売上が一定額(原則として年間1,000万円)を超えると、消費税の課税事業者となり、消費税の申告・納付義務が生じます。
- 固定資産税・都市計画税:不動産を所有している場合に課される税金です。民泊に利用することで、住宅用地の特例が適用されなくなる可能性もあります。
- 宿泊税(都市によっては):東京都、大阪府、京都市などの一部の自治体では、宿泊者に対して宿泊税が課されます。事業者は宿泊者から税金を徴収し、自治体に納付する義務があります。
税金に関する情報は複雑であり、個々の状況によって適用される法律や税額が異なります。必ず税務署や税理士などの専門家に相談し、適切な税務処理を行うようにしてください。
4.民泊許可取得後の運営で重要なポイント
民泊事業は、許可を取得したら終わりではありません。許可取得はスタートラインであり、その後の適切な運営こそが、事業の成功と持続可能性を左右します。ここでは、安全・衛生管理から近隣住民との関係構築、そして法的な報告義務まで、運営において特に重要なポイントを解説します。
安全・衛生管理と消防設備の設置基準
宿泊者の安全と快適な滞在環境を確保することは、民泊事業者の最も重要な責任の一つです。特に、火災や事故の防止、清潔な環境の維持は、宿泊者からの信頼を得る上で不可欠です。
安全・衛生管理の徹底
宿泊施設では、以下の安全・衛生管理を徹底する必要があります。
- 緊急時の対応体制:火災、地震、急病など、緊急事態が発生した際の連絡先(消防、警察、病院、ホストの連絡先)を明確に表示し、宿泊者が容易に確認できるようにします。避難経路図の設置も義務付けられています。
- 清潔な環境の維持:客室、寝具、タオル、浴室、トイレなど、宿泊者が利用するすべての場所を常に清潔に保つことが求められます。定期的な清掃、リネン類の交換、害虫対策などを徹底しましょう。
- 設備・備品の点検:ガスコンロ、給湯器、エアコンなどの設備や、家電製品、家具などの備品は、定期的に点検し、安全に利用できる状態を維持します。故障や不具合は速やかに修理または交換し、事故を未然に防ぎます。
- 飲食物の管理:宿泊施設で飲食物を提供する場合は、食品衛生法に基づいた適切な管理が必要です。提供しない場合でも、冷蔵庫の清掃など衛生的な管理を心がけましょう。
消防設備の設置基準
民泊施設には、消防法に基づき、適切な消防設備の設置が義務付けられています。許可の種類によって求められる基準が異なるため、自身の民泊がどの法令に該当するかを確認し、必要な設備を設置しましょう。特に、火災は人命に関わる重大な事故に繋がるため、厳格な対応が求められます。
以下に、主な許可種別における消防設備の設置基準の例を示します。
| 許可種別 | 主な消防設備の例 | 特記事項 |
| 住宅宿泊事業法(民泊新法) | 自動火災報知設備、消火器、誘導灯(特定用途防火対象物として)、避難経路図 | 原則として、特定用途防火対象物(50㎡以上)に準じた基準が適用されます。 |
| 旅館業法(簡易宿所営業) | 自動火災報知設備、消火器、誘導灯、非常放送設備、スプリンクラー設備(規模による)、防火管理者選任、消防計画作成 | より厳格な基準が適用され、施設の規模や構造によっては、さらに高度な設備や防火管理体制が求められます。 |
| 国家戦略特別区域法(特区民泊) | 各自治体の条例に基づき、個別に定められる | 認定を受けた自治体の条例や指導要綱に従い、必要な設備を設置します。 |
これらの設備は、設置するだけでなく、定期的な点検とメンテナンスが義務付けられています。消防署による立ち入り検査が行われることもあるため、常に法令を遵守した状態を保つことが重要です。
民泊業の許可更新と報告義務
民泊事業は、一度許可を取得すれば終わりではありません。許可の種類によっては、定期的な更新手続きや、行政機関への報告義務が課せられます。これらの義務を怠ると、最悪の場合、許可の取り消しや罰則の対象となる可能性もあるため、常に法令遵守の意識を持つことが重要です。
許可の更新について
民泊の許可は、種類によって有効期間や更新の要否が異なります。
- 住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出:
民泊新法に基づく届出は、原則として有効期限がありません。そのため、定期的な更新手続きは不要です。ただし、事業の廃止や、届出事項(所在地、氏名、連絡先など)に変更があった場合は、速やかに変更届や廃止届を提出する義務があります。
- 旅館業法(簡易宿所営業)の許可:
旅館業法の許可は、原則として有効期限がありません。一度取得すれば、事業を継続する限り有効です。しかし、保健所による定期的な立ち入り検査や、衛生管理状況の確認が行われるため、常に許可基準を満たした状態を維持する必要があります。また、事業内容に変更があった場合は、変更届の提出が義務付けられています。
- 国家戦略特別区域法(特区民泊)の認定:
特区民泊の認定は、認定期間が定められている場合があります。多くの場合、認定期間は数年間で、期間満了前に更新手続きが必要となります。更新の際は、再度、認定基準を満たしているかどうかの審査が行われるため、事前に必要な書類を準備し、手続きを滞りなく進めることが重要です。
行政への報告義務
許可の種類に関わらず、民泊事業には行政への報告義務が課せられています。
- 住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出:
住宅宿泊事業者には、毎年、宿泊実績報告書を観光庁長官に提出する義務があります。報告内容には、年間営業日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数などが含まれます。この報告は、日本の観光政策に活用される重要なデータとなります。
- 旅館業法(簡易宿所営業)の許可:
旅館業の許可施設は、保健所から求められる定期的な報告(例えば、衛生管理状況報告など)や、変更届の提出義務があります。また、伝染病発生時など、緊急時には速やかな報告が求められます。
- 国家戦略特別区域法(特区民泊)の認定:
特区民泊の認定事業者には、認定計画に基づき、定期的な事業報告が義務付けられています。報告内容や頻度は、認定を受けた自治体の条例や指導要綱によって異なりますが、宿泊実績や運営状況などが含まれることが一般的です。
これらの更新手続きや報告義務は、民泊事業の透明性を確保し、適正な運営を維持するために不可欠です。常に最新の情報を確認し、期限内に必要な手続きを完了させましょう。
5.まとめ
民泊事業の開始には、許可取得が不可欠です。 また、事業の成功にはその後の運営体制づくりが欠かせません。無許可営業のリスクを避け、法令を遵守しながら安定した収益を目指すためには、最初の一歩を間違えないことが重要です。
ハウスバードでは、宿泊経営に精通したコンサルタントが、予算・エリア選定から許可申請、開業後の運営設計までを全国の実績に基づきワンストップでサポートします。


