所得税対策と相続税対策が同時にできる|資産管理会社への資産移動のすすめ
先行きが見えないこの時代に資産をどのように守り、運用していくのかは財産を持つ皆様の課題ではないでしょうか。
「個人で不動産経営をするのは思った以上に税金の負担が重い」と思われている方には資産管理会社の設立をおすすめします。
「資産管理会社」とは「プライベートカンパニー」もしくは「資産運用会社」のことであり、上手く運用することで個人事業主ではできない所得税(または法人税)対策、相続税対策が可能になります。
ただし、資産管理会社を利用する全ての人が節税できるわけではありません。
資産管理会社を利用して上手に節税対策を行われている方がいる一方で、資産管理会社の運用が上手くいかずに費用だけかかってしまうケースもあります。
ここでは、資産管理会社についてのメリットとデメリットについてご紹介します。
1.資産管理会社を利用した所得税の節税スキーム
資産管理会社を利用した所得税の節税スキームとは、所得を分散させることで税率を低く抑え、所得税および住民税の負担を軽減させる方法です。
ほとんどの不動産オーナーは1人で賃貸物件を保有しており、賃貸物件から発生する収入は全てオーナーのものになります。
そのため、所得はオーナーに集中し、高い所得税率が課されることになります。
日本の所得税の税率は、収入から経費を差し引いた利益(所得)に応じて異なります。
所得が多ければ多いほど税率は高くなり、最大45%が課税されます。
加えて、住民税が10%課税されますので、最大で55%が所得にかかる税金として徴収されることになります。
参考(2022年4月時点)
一方、資産管理会社を設立した場合はどうでしょうか。
会社の役員にオーナーとその家族などが就任すると、役員に役員報酬を支給することができます。
そのため、会社が受け取った家賃収入を役員報酬としてオーナーとその家族などに分散することが可能になります。
また、役員報酬は給与所得になるため給与所得控除が適用されます。給料所得控除の適用により、さらに所得税の節税効果が高まります。
1-1.資産管理会社は経費の概念が広い
個人で不動産事業を行っている場合の経費の概念は「事業に関連するかどうか」で判断され、所得税の規定が適用されます。
一方、資産管理会社は法人税の規定で判断することになり、所得税より経費の概念が広くなります。
特に次にあげる経費の計上ができることが大きなメリットです。
社宅を経費にできる
資産管理会社名義で住宅を借り上げ、役員が社宅として利用する場合、会社が役員から一定の金額を徴収していれば社宅家賃を会社の経費にすることができます。
旅費日当を経費にできる
資産管理会社が旅費規程を設けていれば、役員に旅費日当を支払い経費にすることができます。
1日あたり定額で日当を支払うことができることは大きなメリットではないでしょうか。
ただし、報告書などの書類を適正に保管し、社会通念上妥当な金額でなければ経費として認められません。
車両の維持費を経費にできる
所得税では、車両など「事業で使用するけどプライベートでも使用するもの」に関する経費は「家事按分」という考え方を行います。
車両の場合は「1ヵ月の走行距離の何割を事業として利用しているのか」または「事業に使用した日数の割合」で事業に使用した割合を算出します。
そして、車検費用やガソリン代、駐車場代など車両の維持に係る必要に事業割合を乗じて経費にできる金額を算出することになります。
そのため、車両の維持費の全てを経費にすることは難しいです。
一方、資産管理会社では車両を会社名義にすることにより、車両の維持に関する全ての費用を経費にすることが可能です。
2.資産管理会社を利用した相続税の節税スキーム
亡くなった人の財産を相続する際に発生する相続税の税率は、亡くなった人の財産の総額によって異なります。
税率は10%から最大55%であり、最大税率が課税された場合は相続した財産の半分以上を相続税として納付しなければなりません。また、相続税の納付は原則的に現金一括納付になりますので、不動産オーナーの相続では納税資金が足りずに賃貸不動産を売却しなければならない事態に陥ってしまうこともあります。こういった状況に陥らないためには、資産管理会社を利用した相続税の節税スキームが有効です。
資産管理会社を設立すると、家族などに役員報酬を支給し、所得を分散させることが可能です。
所得を分散させることは贈与税の課税なしで生前贈与を行うことと同様の効果を得ることができます。
その結果、オーナーの財産が極端に増加することなく相続を迎えることができ、低い相続税率での相続税申告が可能になります。
また、資産管理会社の利用は遺産分割対策としても有効です。
相続財産に賃貸物件があると、誰が相続するのかでトラブルになってしまい、その結果、相続人同士の関係が悪くなり、疎遠になってしまうことも考えられます。
賃貸物件を資産管理会社に移転しておけば、相続時の遺産分割問題も発生せず、スムーズで円満に相続を終わらせることが可能になります。
3.資産管理会社を利用する場合のデメリット
資産管理会社を利用した節税スキームのメリットはとても大きいものですが、初期費用に関するデメリットがあります。
どのような費用が発生するのかを正しく理解することで効果的な資産管理会社の運用を行いましょう。
3-1.法人設立費用
資産管理会社は設立費用がかかります。
会社の形態を株式会社にするのか、それとも合同会社にするのかによって設立費用は異なり、株式会社の場合は約25万円、合同会社の場合は約15万円の法人設立費用がかかります。
3-2.法人運用コスト
法人運用コストとは、資産管理会社を運用していくために必要になるコストです。
会社は、年に1回の決算が必要になり、会社が赤字であっても「均等割り」と言われる地方税を支払わなければなりません。
均等割りの金額は会社のある地方自治体によって異なります。
また、会社の決算は税理士に依頼する必要がありますので、税理士費用も必要になります。
3-3.資産移動費用
資産管理会社 が賃貸収入を得るためには、資産管理会社は賃貸物件の持ち主にならなければなりません。
資産管理会社へ賃貸物件を移転する方法には「個人から会社へ売買による資産移動する方法」と「個人が現物出資することで資産移動する方法」があります。
どちらの方法にしても、土地と建物の登録免許税の負担が発生します。
また、売買による資産移動する方法では、会社が個人から賃貸物件を買い取るために金融機関から融資を受ける場合は支払利息などの追加の費用が発生します。
4.貸別荘の経営/空き家を活用した民泊経営には資産管理会社を利用した節税スキームがおすすめ
最近では金融所得増税が行われ、個人に対する税金の負担が大きくなってきています。
また、贈与税の基礎控除の撤廃が議論されており、贈与税の基礎控除がなくなることで実質的に相続税が増税になるでしょう。
自身の財産を守り、運用していくためには今回ご紹介した資産管理会社がおすすめです。
資産管理会社を利用した節税スキームは貸別荘の経営にも大変効果的ですので、検討してみてはいかがでしょうか。