民泊事業を始めるなら必ず押さえておくべき法律「民泊新法」とは?概要や事業への影響について解説!
ホテル・旅館といった宿泊事業を営む事業者は、原則として旅館業法を遵守して宿泊サービスを提供する必要があります。
民泊事業も以前は旅館業法における簡易宿所としてのみ営業が許可されていましたが、近年では新しく施行された法律「民泊新法」のルールに従って営業を行うことも可能となっています。
当記事では、民泊新法の概要・施行された背景・主な特徴から、民泊新法に則って民泊を開業する方法・手順について解説します。
民泊新法はこれから民泊を開業する事業者が必ず押さえておくべき法律であるため、ぜひご参考下さい
民泊新法とは
民泊新法(住宅宿泊事業法)とは、増加し続ける民泊サービスの健全な普及を図ることを目的として、平成29年6月に制定・翌年6月に施行された新しい法律です。
旅館業法よりも制限が少なく、簡易的な手続で合法的に民泊を開業・運営できることが大きな特徴です。
民泊新法では、民泊に携わる以下3種類の事業者に対して、それぞれの役割・義務について定められています。
・住宅宿泊事業者
民泊(住宅宿泊事業)を営む者。
・住宅宿泊管理業者
住宅宿泊事業者から委託を受けて住宅宿泊管理を営む者。
・住宅宿泊仲介業者
Webサイト等を用いて宿泊者と住宅宿泊事業者の仲介を行う者。
民泊新法に則って民泊を開業・運営する方に直接的に影響があるのは住宅宿泊事業者・住宅宿泊管理業者の2種類。合法かつ適法な民泊を営むためには、その役割・義務について理解しておく必要があります。
民泊新法が施行された理由
民泊新法が施行された理由は、国内で民泊が普及・拡大すると同時に、許可を得ずに営業を
行う違法民泊が増えたためです。違法民泊は法的に問題があるだけでなく、以下のように近隣に迷惑をかけるなど社会的にも問題視されるようになりました。
・施設の衛生管理・安全管理が不十分
・利用者が近隣の住宅と間違える
・騒音(騒ぐ・ドアの開閉音)
・事業者がゴミ出し等の地域のルールを守らない
・苦情の連絡先を公開していない・苦情に対応しない
一般的な住宅では旅館業法による民泊の要件を実質的に満たせないことも、違法民泊が横行した大きな原因と考えられています。
民泊は多様化する宿泊ニーズに応えることができていたというベネフィットもあるため、民泊を禁止するのではなく健全なサービスを普及させることを目的に制定されたのが民泊新法となります。
民泊新法の主な特徴
ここでは、民泊新法の主な特徴について解説します。民泊ビジネスに与える影響も大きいため、民泊事業を検討している方やこれから始める方は、ぜひ確認しておいて下さい。
適用される建物
民泊新法の最大の特徴といってもいいのが、法令が適用される建物が住宅である点です。民泊新法施行以前の民泊は、原則として旅館業法の許可を取得する必要がありましたが、一般的な住宅・設備・立地で旅館業法の要件を満たすことは困難であるため、違法民泊が横行していました。
現在では一般的な住宅設備に対する要件を定めた民泊新法が施行されたことにより、事業者は住宅を用いて合法的に民泊を運営することが可能となっています。また、旅館業法の適用範囲外である住宅専用地域においても、民泊新法の要件を満たすことにより合法的に民泊を運営することができます。
年間営業日数の上限
民泊新法では簡易的な手続で一般住宅を用いた民泊を運営することができますが、年間営業日数の上限は180日以内に制限されます。こちらは通称「180日ルール」と呼ばれており、民泊新法における罰則規定はありませんが、無許可で旅館業を営んだとして旅館業法による罰則が適用される恐れがあるため注意が必要です。
180日ルールは毎年4月1日から適用されるため、初年度の10月1日に営業をスタートすれば、翌年の9月30日までは実質的に年間360日営業を行うことも不可能ではありません。
初年度のみ裏技的に営業日数を稼ぐことができますが、翌年移行は毎年180日以内で営業を行わなければならないため、制限なく営業を行いたい場合は旅館業法による民泊もしくは特区民泊を検討する必要があります。
家主居住型と家主不在型について定義されている
民泊新法では、家主居住型民泊と家主不在型民泊について、それぞれの管理運営責任を以下のように定義しています。
・家主居住型民泊
民泊として届出を行った住宅に住宅宿泊事業者が居住している形態。家主が常駐しているため、住宅宿泊事業者が住宅宿泊管理者を兼任することが可能。
・家主不在型民泊
民泊として届出を行った住宅に住宅宿泊事業者が居住していない形態。家主が宿泊管理業務を行うことができないため、住宅宿泊管理業者に管理を委託することが義務付けられている。
家主居住型民泊においても、家主が旅行等で不在となる場合は、住宅宿泊管理業者に業務を委託する必要があります。
民泊事業者が1人で民泊を運営する場合においても、家主不在型に該当する場合は管理業務の委託が必要となるため、開業時には委託先・委託費用についても検討しておかなければなりません。
民泊新法に則って民泊事業を始める手順
民泊事業を営む際には、民泊新法に抵触しない適法・合法なビジネスを行うことが非常に重要。
しかし、具体的にどのように事業を始めれば良いのか分からない方もいるでしょう。
ここでは、民泊新法に則って民泊事業を始める手順について解説します。
民泊として使用する物件が民泊新法の要件に当てはまることを確認
既存の物件を使用する場合においても新規に物件を取得する場合においても、民泊新法に則って民泊を開業するのであれば、物件が民泊新法で定められた設備要件・居住要件を満たしていることが前提となります。
まずは物件の設備要件・居住要件をチェックして、物件が住宅宿泊事業を実施できるかどうかを確認しましょう。
物件の設備要件・居住要件については、観光庁が運営する以下のサイトから確認することが可能です。
住宅宿泊事業者の届出
物件が民泊新法の要件に適合していることを確認したら、続いて以下の2点を確認します。
・大家さんやマンション管理規約等により民泊が禁止されていないか確認して承諾書・証明書をもらう
・消防設備を整えて消防庁から消防法令適合通知書を入手
上記2点が揃ったら、届出書・誓約書・各種証明書等合計を漏れなく揃えて都道府県知事に民泊の届出を提出します。
住宅宿泊事業者としての管理義務について学ぶ
民泊新法では、開業時の物件の用件だけでなく、住宅宿泊事業者としての管理義務についても定められています。
・宿泊者の衛生・安全の確保
・外国人宿泊客に対する快適性・利便性の確保
・宿泊者名簿の作成・備え付け・提出
・周辺地域への配慮・苦情等への対応
・標識の提示
(参考:e-GOV「住宅宿泊事業法」)
民泊事業を適切に運営するためにも事前に管理義務について学び、運営方針や運営ルールについて検討しておきましょう。
事業計画を立てる
民泊新法に則って民泊を開業する場合において非常に重要となるのが、180日ルールを視野に入れた事業計画の立案です。
ホテル・旅館よりも宿泊料・客単価が安く約半分の日数しか営業できないことは、宿泊ビジネスを行う事業者にとって思いのほか大きなハンデとなります。そのため、施設の運営にかかる経費・予想売上・見込み利益まで細かく試算して、採算があう事業計画を作成しておくことが非常に重要となります。
採算が合わなければ、民泊ビジネスを継続的に運営することはできません。明確に収益を得らえる事業計画が作成できるまでは、物件の内外装工事や設備・備品の購入などの準備を保留にしておきましょう。
内装・外装の工事を行う
民泊新法の基準を満たしている物件であれば、内外装工事を行わなくとも民泊を開業することは可能です。しかし多数の民泊事業者と差別化を行うためには、利用者が快適に過ごせるようにリフォーム・リノベーションを行い、満足度向上に繋げることが非常に重要。
居心地の良い雰囲気・快適に過ごせる環境を構築するためにも、内装・外装の工事を実施しておきましょう。
設備・備品を整える
内外装工事が完了したら、民泊運営に必要なベッド・テーブル・イス・家電・空調といった設備・備品を調達して、施設内に配置していきます。
民泊は簡易的な宿泊施設のイメージがありますが、近年では内外装と同じく設備・備品も差別化や顧客満足度向上において重要なポイントとなってるため、インテリア・アメニティ・民泊Wi-Fiなどをできるだけ充実させておくことがおすすめ。
周辺エリアの民泊のリサーチを行い、競合に負けないレベルで設備・備品を充実させましょう。
集客手段を用意する
民泊事業を軌道に乗せるには、いかに利用者を集めて稼働率を高めるかが重要であるため、効果的・効率的に集客を行う方法を用意しておくことがポイントとなります。
民泊の主要な集客手段は、インターネットを活用した方法となります。
・民泊仲介サイト
利用者と民泊をマッチングするサービス。民泊の集客手段としてマスト。
・SNS
情報拡散力の高さや利用者との双方向コミュニケーションにより高い集客効果が見込める。
・HP・ブログ
情報発信を行う媒体として効果的。余力があれば用意しておきたい。
・Web広告
媒体を持っているのであれば、ターゲティング精度やコストパフォーマンスに優れたWeb広告もおすすめ。
上位から順に優先度の高い集客手段となります。最低でも民泊仲介サイトとSNSは準備しておきましょう。
営業開始
全ての準備が整ったら、民泊サイト等を駆使して利用者を集め、民泊の営業をスタートします。利用者のニーズに応えるおもてなし・サービス提供を行い、利用者で賑わう民泊を目指しましょう。
まとめ
民泊新法が施行されたことにより、簡易的な手順で適法性を証明した民泊を運営できるようになりました。
これから民泊新法に則って民泊を開業する方は、不要なリスクやトラブルを避けて適切な民泊を営むためにも、民泊新法の内容を理解・遵守しておくことが重要です。
宿泊施設を開業したい方には、貸別荘・ゲストハウスもおすすめ。
まずはお気軽にご相談を!
ハウスバードはこれまで、東京や京都をはじめ北海道や箱根、軽井沢など全国各地で「1日から貸せる家」をプロデュースしてまいりました。
物件の提案から宿泊施設のデザイン、施工、運営準備や顧客対応まで一貫して対応することで、余分なコストを抑えるだけでなく、収益性の高い宿泊施設作りも実現してまいりました。
弊社では、貸別荘・ゲストハウスの企画・収益試算・事業戦略・サポートまで総合的なサービスを提供していますので、ご興味のある方はぜひご相談下さい。